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住友化学がケミカルリサイクルで使用済みプラを原料に戻す

樹脂の再原料化で生き残る
住友化学がケミカルリサイクルで使用済みプラを原料に戻す

触媒の性能評価

気候変動や海洋プラスチック問題を受け、世界で脱プラスチックが叫ばれている。だが、包装容器を紙や金属に変えても、中身の鮮度保持や輸送燃料増加などの別の課題が生じる。住友化学代表取締役専務執行役員の竹下憲昭は「プラの存在は当たり前過ぎて、ありがたみが認識されていない」とため息をつく。

【地道に啓蒙】

問題は安く手に入るがために、簡単に捨てられること。「正しく処理すれば、海洋ゴミは流出しない。地道に啓蒙活動を続ける」と竹下は話す。

ただ、それだけでは資源問題に対し作り手の責任を果たせない。同社は矢継ぎ早に、化学反応を用いて使用済みプラを新品に戻す「ケミカルリサイクル」の実現に向けて二つの手を打った。

積水化学工業とは、食べ残しや紙、プラなどの混ざったゴミをまるごとエタノールに変換し、エタノールからエチレンや汎用プラを生産。2025年度の本格販売を目指す。室蘭工業大学とは、複数種類が混ざったプラゴミを直接エチレンやプロピレンに変換する共同研究を始めた。

竹下は「樹脂をどう原料に戻すか。石化が生きていくにはこれしかない」と強調する。4月に専門の研究組織を新設し、触媒やプロセス技術でブレークスルーを目指す。石化の腕の見せどころだ。

一方、中核拠点のあるシンガポールでは、二酸化炭素(CO2)排出にトン当たり5シンガポールドルを課税する「炭素税」が19年から開始。グローバルビジネスで成り立つ同国にとって、環境対策は世界へのアピールになるが、このままでは企業の競争力を下げる。

【炭素税】

石化基礎原料を生産するペトロケミカル・コーポレーション・オブ・シンガポール(PCS)社長の米村啓は、「トップクラスのエネルギー効率をさらに改善するのは難しい。一律課税ではなく、(エネ効率で税率を変える)ベンチマーク方式の方がいい。政府とも密に話し合っている」と話す。同社はコンプレッサー更新といったCO2排出削減対策を実施しつつ、最適な推進策を探る。炭素税の動向は日本や世界に影響しそうだ。

今後数年が石化の未来をつくる。(敬称略)

日刊工業新聞社2020年3月17日

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