ドイツの「ミッテルシュタント」も後継者問題に直面、親族か親族外か
少子高齢化が進み、国内市場が伸び悩む中、苦戦を強いられている日本の中小企業。直面する課題は生産性の向上、人手不足対策、後継者の育成ともいわれている。同様の悩みはドイツの中小企業も抱えている。
日本と同様、ドイツの中小企業も経済の中では重要な役割を果たしている。企業数では全体の99・6%、雇用者数では58・5%、売上高では35・3%を占めている。中小企業の定義は従業員250人以下、売上高5000万ユーロ以下であるが、ほぼ同義語としてミッテルシュタント(中堅企業)という言葉が使われることが多い。
このミッテルシュタントは、ほとんどが家族経営といわれている。ドイツの家族経営は会社を所有し、なおかつ家族の一員が経営の主導権を握るものである。ミッテルシュタントの中には、ニッチな分野で世界的なシェアを持つ「隠れたチャンピオン企業」も多く、輸出にも貢献している。日本でいうグローバル・ニッチ・トップであろう。
政府系の金融機関であるドイツ復興金融公庫(KfW)では、このミッテルシュタントの後継者問題に関し、毎年アンケートを実施している。2019年に実施された調査によれば、12%の経営者がすでに後継者を見つけ、条件などの交渉も終了しており、同じく12%が後継者は見つかったものの交渉は継続中ということであった。
9%が後継者探しを始めており、18%がまだ情報収集の段階、48%はまだ何も手を付けていない、という結果となっている。後継者候補として誰を考えているかという問いに対しては、複数回答が可能であるため合計は100%を超えるが、家族が44%、外部の者が50%、従業員が34%、共同所有者(家族以外)が27%と回答している。
家族に継承という回答が17年には54%あったものが10%の減、その分外部の者が8%、従業員が9%の増となっている。家族への引き継ぎが減少し、第3者への譲渡が増加している。ミッテルシュタント経営者の平均年齢は昨年で52歳であり、60歳以上は27%を占める。高齢化の傾向は今後も続くと予想されている。
ミッテルシュタントは雇用の大きな担い手であり、地域経済にとっても重要であるため、後継者難による廃業はぜひとも避けたいところである。そのため連邦経済省が中心となり、復興金融公庫、商工会議所、貯蓄銀行などが協力し、家族以外の後継者探しのためにネットによる交流の機会を設けている。ベビーフード・メーカー、レンタカー会社、眼鏡チェーンなど著名な中堅企業の家族の後継者が見つかったという新聞報道もあるが、後継者選びは、一般的にはこれからも難航しそうだ。
(文=新井俊三<国際貿易投資研究所客員研究員>)<関連記事>
トヨタの世界戦略を支える強力な「日独連合企業」