子どものバスケットボールに見た日本人の戦い方、チームエンジニアリングで世界に勝てる

フラクタ・加藤崇CEO

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10歳になる息子は、今バスケットボールに夢中だ。米国の小学生は、季節によって放課後に参加するスポーツクラブ(部活動のようなもの)を変える。春夏は野球、秋冬はバスケットボールやアメリカンフットボールといった具合だ。昨年11月の終わりにシーズンが始まり、12月初めに最初のゲームが行われ、僕が住むメンローパークの体育館まで応援に行った。彼の小学校のチームは約10人、相手チームはお隣の小学校だ。10人のメンバーが5人2組に分かれ、クオーターが終わるごとに交代でコートに飛び込んでいく。

ここメンローパークはシリコンバレーには珍しく、白人ばかりが居住する地域であり、アジアから来た家族、またその子どもを見ることは珍しい。自然と、バスケットボールのチームメンバーも白人ばかりになる。息子がスターティングメンバーになったまでは良かったが、他のメンバーの子どもたちを見てがくぜんとした。3年ほど前はクラスメートもまだ小さかったが、10歳くらいを超えると、白人の子どもは圧倒的に体格が優れていることが分かる。

身長差は1・2倍ほど、体重差ともなれば大きい子は2倍ほどあるかに見える。骨格そのものが違うとしか言いようがない。彼らの手足は太く、また日本人よりはるかに筋肉質だ。対戦相手の小学生たちも白人が多く、体格は十分。翻って、自分の息子は(家では気付かなかったが)ひどく痩せているように見え、何とも言えない気持ちがした。僕はふと、「こんな連中の中で、どうやって戦うんだ」と漏らした。

しかし、ゲームが始まるやいなや、僕のこうした評価が必ずしも的を射ていなかったことに気付かされた。息子は俊敏にコートの中を動き回り、隙を見てセンターにいる体格の大きなチームメンバーにうまくパスをつなぐ。相手チームから距離を取ると、3ポイントシュートを放つ。ディフェンスでも、何ともうまく立ち回る。体格の大きな子の鈍重さを逆手に取って、瞬時にボールを奪い、攻撃に転じるのだ。ひょうひょうとしているが、父親によく似て、とにかくハートが強い。白人の中に入っても一切気後れせず、自分の体格など全く気にしていないようだ。僕はふと、「日本人には日本人の戦い方があるな」と思い直した。

息子の試合を見ながら、僕の頭の中にはさまざまな思いが去来した。よく考えれば、ビジネスの世界における自分もそうだった。ヒト型ロボットや人工知能(AI)といった高度なテクノロジーを起点に、カラダの小ささ(資金調達規模の小ささや英語を操るビジネスマンの少なさ)をカバーしてきた。ビジョンと情熱、ハートの強さを頼りに、米国の市場で勝負をかけたのだ。そして、「やっぱりエンジニアリングだな」と思った。日本人が世界で戦うためには、金融業務など、コモディティー化されたパワーゲームを戦うのはあまりにも不利だ。一見勝ち目がないように見える経済ゲームの中でも、強いエンジニアリングがあれば、まだ戦える。目の前で繰り広げられるバスケットボールの接戦を見守りながら心が躍った。

僕は同時に、今の時代、純血主義で戦うのも、また間違っていると思った。日本人には日本人の良さ、またそれを起点にした戦い方がある。これをきちんと生かしながらも、体格の大きさも要素として、きちんと取り込んでいかなければ、国際競争には勝てない。シリコンバレーの強さはそこにある。

メンローパークから20分ほど南にクルマを走らせればグーグル本社があるマウンテンビューがあり、アジアから来た優秀なエンジニアが多く住む。グーグルの最高経営責任者(CEO)も今やインド人だ。日本人の特性を生かし、エンジニアリングを起点にしながら、さらに多様性を担保してチームを組成すれば、日本は世界で戦える。帰り道、息子を強く抱きしめた。

【略歴】かとう・たかし 早大理工卒業。米スタンフォード大元客員研究員。ヒト型ロボットベンチャーのシャフトを共同創業し、米グーグルに売却。インフラ劣化予測の人工知能(AI)ベンチャー、フラクタを米で創業。米シリコンバレー在住。

日刊工業新聞2020年1月20日

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