【新型コロナ】アップルやGEの業績失速、日本の電機大手はいまだ影響把握しづらく
世界の電機・IT業界では新型コロナウイルスの感染拡大による業績影響が顕在化してきた。米アップルやゼネラル・エレクトリック(GE)、HPなどがマイナス影響を相次いで明らかにした。巨大市場である中国の消費が冷え込み、部材などのサプライチェーン(供給網)も不安定化して製品生産に支障が出ている。米大手の取引先や同業が多い日本も新たな対応を迫られそうだ。
GEは4日(現地時間)、新型コロナウイルスの影響により、2020年1―3月期の産業部門のフリーキャッシュフロー(FCF)が3億―5億ドル減額すると発表した。同業の日立製作所や東芝も業績へのマイナス影響が懸念される。
その東芝は2―3月に中国向け売上高として約1000億円を見込んでいた。内訳は半導体やエアコン、エレベーター、インフラ関係と幅広い。「この売り上げがなくなることはないが、来年度前半へ、どの程度ずれ込むかがポイントだ」(東芝・平田政善専務)とそのマイナス影響は読み切れない。
アップルは他社に先駆けて、公表済みだった20年1―3月期の売上高予想を達成できないと2月中旬に発表した。理由に挙げたスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の減産と中国の需要低迷は、どちらも新型コロナウイルスの影響だ。アイフォーンのサプライヤーには日本企業も数多く名を連ねており、業績への影響が懸念される。
アップル向けの売り上げが全体の23・5%(18年度実績)を占めるシャープは難局に立つ。戴正呉会長兼社長は3日の社員向けメッセージで「中国工場の稼働停止や物流の混乱、さらには経済活動全般の停滞などから、先行きはますます不透明になっている」と危機感を吐露した。
ジャパンディスプレイ(JDI)はアップル向けの割合が60・6%(同)と突出している。影響は精査中としているが、多少の業績下振れは避けられそうにない。村田製作所やTDK、アルプスアルパインなどにも中国発の逆風が吹く。
中国でパソコンやプリンターの大半を生産するHPも、新型コロナウイルスの影響で2―4月期に1株当たり利益が0・08ドル減少する見通しを2月末に明かした。同社にプリンター部品を供給するキヤノンの業績の足を引っ張る可能性がある。
国内電機・IT大手の多くは、まだ新型コロナウイルスの感染拡大の具体的な業績影響を明らかにしていない。供給網が複雑に入り組んでいるため、被害の全体像を把握しづらい。ただ、不透明ななかでも無用な不安を払拭(ふっしょく)するためには、積極的な情報開示が求められる。
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