びっくり!ネジ製造機を自力でIoT化しちゃった部品メーカー
ミズキ(神奈川県綾瀬市、水木太一社長、0467・70・1710)は、本社工場で稼働するネジ生産の圧造機、転造機など計84台の自力によるIoT(モノのインターネット)化を実現した。長時間稼働の機械1台ずつにセンサーと通信機器を接続する作業に苦心したが、作業日報の電子化や生産管理システムのデータ化、稼働状況の常時把握などを果たした。今後は蓄積したデータを分析し、最適な稼働スケジュールで生産効率を高める方針だ。(相模支局長・石橋弘彰)
【丁寧に作業】
「外から見ると全く同じ圧造機なのに、中の構造が違う。機器の設置作業には、ほとほと参った」。IoT化を担当した小野寺賢司管理部長は苦労をこう振り返る。
同社は自動車や電気機器で使うネジの製造が主力。中には直径0・5ミリメートルの極小サイズもある。線材を圧造機でネジ頭を形成して1個ずつ切り、転造機でネジ山を作って製造する。本社工場では1日に200万個のネジを製造しており、圧造機や転造機のほか、品質管理用の選別機、測定器など多くの機械が稼働する。多くが長年使われているものだ。
機械は1台ごとに電気系統が異なる。配線ミスがあると機械が故障する。ショートしないように穴を開ける位置や振動に配慮し、丁寧な作業をこなしていった。ただ、負担も大きく1日1台ずつ進めていった。2018年末に先行して7台に設置。これまで順次設置台数を増やしてきた。
【稼働を常時把握】
生産管理、帳票電子化、稼働状況通知のシステムデータを共有するにも苦労した。米マイクロソフトの表計算ソフト「エクセル」を使い帳票ができるように自作。共有化のため一部のプログラムを自力で取り組んだ。小野寺部長は「ノウハウを得たので他社のIoT化もできる」と笑う。
ネジの寸法を測った時点で計器からデータを作業日報に直接入力できるようにした。生産管理システムの加工指示データを組み合わせて当日に、どの機械が何をどのぐらい作ったかが一覧で把握できるようにした。稼働状況も可視化し、どの機械で“チョコ停”が多かったかもすぐ把握でき、早急に対策が練られるようになった。
今後は海外拠点も視野に入れてIoT機器の設置機械を増やす。加工指示の達成率を自動検出できるようにする。稼働率の低い機械を検出してラインを最適化するなどの取り組みを検討中。データ活用には人工知能(AI)も取り入れたいとしている。水木社長は「旧態依然では置き去りにされる」と危機感を示す。今後も生産性向上の努力は惜しまない。
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