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スマホがゲーセン市場浸食、運営会社の倒産に隠されたやり手経営者の禁じ手

アーネスト、架空循環取引に傾倒

アミューズメント機器卸のアーネストは、業界で経験を積んだ代表の望月千恵子氏が1999年7月に設立した。独立前に勤めていた企業から得意先を引き継ぎ、クレーンゲーム機やプリントシール機などの中古機器のほか、景品や消耗品なども取り扱い、2002年3月期には年売上高約8億5800万円を計上していた。

03年以降は自社でゲームセンター運営にも乗り出していたが、スマートフォンが爆発的に普及するなどでゲームセンターのオープンやリニューアル需要は激減、12年3月期の年売上高は約1億7000万円にまで落ち込んだ。その間、赤字決算を余儀なくされ、資金繰りも悪化。金融機関からは返済猶予による支援を受けていた。

業界環境をみれば、業績を上向かせるのは至難の業であることは明らかだったが、アーネストは13年3月期以降7期連続で増収を果たした。カラクリは架空循環取引への傾倒だ。破産申立書にその文言は見当たらないが「得意先から代金を前払いで受け取り、仕入れ先には掛けで支払う」取引が主体で、「納品場所を指定すれば実際にゲーム機を仕入れなくても取引が完結」するなど架空取引の存在を示唆する記述がある。

さらに、債権者一覧表に登場した各企業が入り組んで取引関係を有しているうえ、その多くの企業が厳しい業界環境下で売上高を伸ばしている不自然さもあった。アーネストに対する取り立て不能債権が発生した共和コーポレーション(東証2部)が「架空循環取引が存在する等の事実が判明」したと発表しているのが動かぬ証拠だ。

結果として19年3月期の年売上高は約24億8300万円まで膨らんだが、同年11月に得意先からの入金が遅れ、買掛金の支払い不能が決定的となったことから事業を停止。上場企業をも巻き込んだ取引の輪はあっけなく崩れ去った。

(帝国データバンク情報部)
◇(株)アーネスト 住所:大阪市東成区神路1―6―18 代表:望月千恵子氏 資本金:1000万円 年売上高:約24億8300万円(19年3月期) 負債:約15億3700万円
日刊工業新聞2月25日

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