自動車業界依存から抜け出せ、ハンドル用レザー加工技術が見つけた新市場
高級車のハンドル用レザーをバッグに―。タナベ(愛知県岡崎市、田辺一雄社長、0564・23・9247)は、2019年末に同社初の自社商品として革製ビジネスバッグを発売した。主力の自動車ハンドル用レザーの加工で培ってきた技術を生かし、BツーC(対消費者)商品に売って出る。
「転換期に直面する自動車業界に依存する現状から抜け出す」―。田辺社長は自社商品の展開に乗り出す理由を、こう強調する。
同社は自動車部品向けのウレタンやゴムなど各種素材の裁断加工専業として1989年に設立。その後、外国人実習生が帰国後に「仕事がない」と困っている状況を聞き、その対策として2010年にベトナムにハンドル用レザーの加工、巻き付け縫製を手がける会社を立ち上げた。
レザーに対する知識はほぼ皆無。そこから上質ななめし革を選定する目利き力、独自の研磨、塗装技術などを磨き、耐久性と上質な手触りを誇る「タナベレザー」を確立。日本の大手自動車メーカーに採用され、ハンドル用レザーは同社の大きな事業の柱となった。
ただ自動車業界は100年に一度とも言われる大変革期。不透明感が増す将来を見据え、自動車とはまったく異なる分野としてBツーC商品への進出を決断した。第1弾がタナベレザーを使ったビジネスバッグだ。
19年12月にクラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を利用して試験販売を開始。価格は3万9800円(消費税込み)。開始24時間で目標額の50万円に達し注目を集める。
今後、バイク用サドルバッグなどタナベレザーを使った商品群を拡充する計画。将来は自社商品で「売上高6億円」(田辺社長)を目標に掲げる。(取材=名古屋・浜田ひかる)
日刊工業新聞2020年2月7日