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環境NGO「CDP」報告会の役員スピーチに見る、日本企業による気候変動への危機意識

環境NGO「CDP」報告会の役員スピーチに見る、日本企業による気候変動への危機意識

環境NGO「CDP」による世界の大企業の気候変動問題への取り組みにおいて評価Aリストに選ばれた企業の役員

環境NGO「CDP」(英ロンドン)が企業の気候変動対策を評価した2019年版の調査によると、日本の38社が最優秀の「Aリスト」に選出された。国別のAリスト企業数で日本が初めて首位となり、20日に都内で開かれたCDP報告会は、日本のAリスト企業から33社の役員が参加するという豪華なイベントとなった。

恒例の役員スピーチでは気候変動への危機感をあらわにする経営者が目立った。東京海上ホールディングスの岡田誠副社長が「気候変動は最大のテーマ」と語ると、住友林業の市川晃社長は「一刻の猶予もない。Aリスト企業として気候危機に対応する」と決意を表明した。

熱のこもったスピーチもあった。東京製鉄の西本利一社長は「鉄鋼業界が一番、気候変動に向き合わなければならない」とし、「脱炭素に向け、自らの道を進む」と覚悟を語った。ニコンの牛田一雄会長は準備した紙を読み上げず、自身の言葉で「気候変動に否定的な人に言いたい。問題から目を背けてはいけない」と訴え、「経営層の発信が大事」と会場に呼びかけた。

日本で経営者が気候変動問題にメッセージを発する場は貴重だ。こういう機会が増えてほしい。

出典:日刊工業新聞2020年1月24日

世界で企業の気候変動対策評価 日本、最優秀38社で最多 

出典:日刊工業新聞2020年1月21日

環境NGO「CDP」(英ロンドン)は20日、世界の大企業の気候変動問題への取り組みを評価した2019年版の結果を発表した。日本からイオン、パナソニック、花王など38社を最優秀の「Aリスト」に選んだ。18年の20社から躍進し、現在の評価方式になった16年以降で日本が国別のAリスト企業数で初めてトップになった。CDPは企業の環境評価で最も影響力があり、日本の産業界は世界的に高評価を得た。

CDPは企業に質問状を送り、回答を採点する。19年は世界8400社を調査し、上位2%の179社をAリストに選んだ。世界の500以上の機関投資家がCDPを支持しており、成長力を備えた企業を選ぶESG(環境・社会・企業統治)投資に活用される。

ソニーは5年連続でAリストになった。他にも富士通、SOMPOホールディングス(HD)、積水ハウスなどが連続でAリスト入りした。また富士電機、富士フイルムHD、NECなどが初めてAリストに選出された。国別2位の米国はウォルマート、マイクロソフトなどがAリストだった。

CDPは毎年、設問を見直しており、今回は異常気象が経営に与える影響の予測を迫る「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言」に準拠した。CDPジャパンの高瀬香絵シニアマネージャーは「提言を意識する日本企業が多い」と好成績の要因を分析した。ただし20年版は「再生可能エネルギーの導入にかかっている」とコメント。

日本は再生エネを調達しにくく、20年の日本企業の評価については厳しい見方を示した。

松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
CDP報告会は、役員によるスピーチコンテストでした。会長、社長、副社長、役員が参加し、数分の持ち時間を使って語るのですが、自社の活動を紹介する内容が多数。危機感や脱炭素への決意表明は、埋没せずに印象に残りました。住友化学の上田副社長は他社に協業を呼びかけていました。そろそろ「わが社は何年に創業し・・・」「わが社はこんないいことしていまして・・・」は終わりにし、どうしたら未来が良くなるのか、訴えるスピーチが増えることを期待したいです。

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