【動画あり】ヒューマノイド一歩一歩進化、主要メーカーの動向は
日本のヒューマノイド(ヒト型ロボット)が一歩一歩進化している。ヒト型はその複雑さからロボット技術の最高峰とされるも、コストが高く、事業化が難しいロボットだ。最近はアバター(分身ロボット)として注目されている。ヒト型であれば自分の身体を動かすように乗り移って遠隔操作できる。誰でも操縦者になれるため、遠隔危険作業や遠隔観光などの用途が期待される。(小寺貴之)
きめ細かく対応
「化学プラントや電力、ゼネコンなどの非定型の危険作業のニーズがある。現場に応じてきめ細かく対応したい」と東京ロボティクス(東京都新宿区)の坂本義弘社長は力を込める。同社は協働アームを備えたヒト型ロボを提案する。操縦者の腕の動きを慣性計測センサー(IMU)で計測し、ロボの双腕に反映する。ロボの視界はヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)で共有し、操縦者は自分の身体のようにロボを操れる。NTTコミュニケーションズと早稲田大学などと開発を進める。
溶鉱炉の残渣かき出しなど、動作が決まった危険作業は単腕アームなど専用装置が有効だ。ヒト型は現場で状況に合わせて対応を変える非定型作業に向く。ケーブルを腕で避けて隠れたメーターを読んだり、振動センサーを配管にあて異常振動を検査したり、簡単な作業を遠隔でできると期待される。
NTTコムの中蔵聡哉主査は「非定型作業は自動化が難しい。人が担うと仕事を保証できる」と利点を説明する。大型プラントの点検では担当者が1日に数キロメートル歩くこともある。分身ロボなら移動中は別の作業にあてられる。
川崎重工業は遠隔操作システムとヒト型の両方から攻める。遠隔操作は力覚などを操縦者にフィードバックして、その作業を記録しロボで再現する。熟練技能者の技をロボットに落とし込む試みだ。研削やバフ研磨などの自動化をすすめる。
ヒト型ロボ「Kaleido(カレイド)」は電池や制御コントローラーを内蔵し、単体で動けるようになった。開発者の掃部雅幸課長は「コントローラーはラックほどの大きさがあった。これをお腹に収めつつ全体をスリムにした」と振り返る。先月の「国際ロボット展」のデモでは災害救助を模して人形を抱え上げたり、がれきを除去したりする様子を披露した。将来、遠隔操作とヒト型の技術が統合されれば、ヒト型による遠隔作業と自動化がみえてくる。
遠隔操作
トヨタ自動車はヒューマノイドの操縦コックピットの開発に力を注ぐ。1台のコックピットからヒト型「T―HR3」や東京五輪のマスコットロボなど複数の機体を操縦できるようになった。T―HR3は片腕7軸、マスコットは片腕5軸だ。体格も関節数も違うが、ソフトウエアで補完して動きを一様に再現する。森平智久ヒューマノイドロボットグループ長は「遠隔操作のポテンシャルを引き出せる」と説明する。
動作確実に
操縦者の指の動きをモーター負荷で計り、ロボの指先に反映する。ロボが物をつかむ力は操縦者にフィードバックする。操縦システムを軽量化したためカクテルのシェーカーを振るような、確実な握りと素早さが求められる動作が可能になった。展示会ではT―HR3との握手に行列ができた。
ヒューマノイドはデビューの時に世の期待が最大になるが、その後も年単位の改良が必要だ。この研究開発を民間企業が支えている。個々の技術は地味だがロボットのポテンシャルを引き出す中長期の投資になっている。