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「無人搬送車」導入1台から…「RaaS」ビジネスの競争が始まった

無人搬送車(AGV)導入を1台から始められる環境が整いつつある。AGVは産業用ロボットに比べて使い回しやすく、インドや中国などの海外製品が価格競争をもたらしている。リースやレンタル会社にとっては在庫を抱えて、顧客が必要な台数と期間だけ貸し出すサブスクリプション(定額課金)や従量課金モデルを成立させやすい。機体開発の次のビジネスモデルの競争になっている。(取材・小寺貴之)

【少量管理に提案】

「今後、人手不足で現場がますます困ることは目に見えている。早めに自動化のノウハウをためることが大切だ」と三菱商事の中谷徳志物流開発部長は強調する。月額制倉庫ロボットサービス「Roboware」を始めた。インド・グレイオレンジ製「バトラー」などAGVや移動棚を貸し出す。機体は5台から、100棚分、約100坪のスペースで自動化を始められる。

商品を積んだ棚が運ばれてくるため、スタッフは在庫を探して倉庫を歩き回る必要がない。倉庫全体を自動化するのではなく、まずは少量管理に提案する。季節物を次のシーズンまで取り置くキャリー品や返品などがターゲットだ。小さく始めて運用性を確かめながら徐々に規模を広げる。中谷部長は「繁忙期など物量に応じてAGVの台数を調整できる。柔軟な運用を支えていく」と力を込める。

AGVに限らず、大規模に自動化を進めて運用を変えると現場が混乱するリスクがあった。オムロンは工場の工程間搬送にAGVを1台から提案する。AGVにはミスミグループ本社の組み立て棚を載せる。

移動経路はスマートフォンやタブレットで簡単に設定できる。障害物回避などはAGVが自動でやる。オムロン経営基幹職の越智直哉氏は「棚は2時間あれば組み立てられる。システム構築は要らない。小さく始めて、現場が慣れてから規模拡大を考えればいい」と背中を押す。

【ニッチを開拓】

AGVも可搬重量や自律機能、センサーなど、種類は多彩だ。ルートや荷物によってAGVを使い分けると、現場を複数種のAGVが走ることが想定される。トピー工業はクローラー式のAGVを2月に発売する。

東北大学の全方位クローラーをベースに移動機構を開発。向きを変えずに前後左右に移動できる。クローラーはクレーンのレールや床をはう配管・配線を乗り越えられる。同社の中川英司部長は「AGVのためだけに床を整備できない。ニッチを開拓する」と力を込める。

このAGVの運行管理システムはNECが提供する。飛行ロボット(ドローン)の運航管理向けに開発したルート割り当て技術をAGVに応用した。自動フォークリフトやAGVなど、さまざまな機体を一元管理する。NECの阿久津哲史マネージャーは「倉庫などの正確な図面があれば1日で立ち上げられる」と胸を張る。リース会社と連携し、サブスクの提供を始める計画だ。

AGVはリースや運行管理システムを巻き込み、「RaaS(サービスとしてのロボット)」に競争が移っている。

日刊工業新聞2020年1月15日

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