タイで人気、いすゞのピックアップトラックが担うもう一つの役割
いすゞ自動車は日本ではトラックだが、タイではピックアップトラックのイメージが強い。2019年10月には、8年ぶりに全面改良した積載量1トンのピックアップトラック「D―MAX」を発売した。タイでトップシェアを争う人気車種だが、燃費や耐久性などの性能を高めて拡販を狙い、付加価値のあるいすゞ車として性能を広くアピールする。
タイではピックアップトラックの人気が高い。用途は農村部の仕事向けから都市部でのスポーツ多目的車(SUV)スタイルとしてまで幅広い。タイの新車販売に占めるピックアップトラックの割合は4割を超える。いすゞにとっても世界販売の約4分の1を占めるタイのピックアップトラックは重要な旗艦モデルでもある。
新型D―MAXで特に強化した点は燃費と安全性だ。谷重晴康泰国いすゞ自動車社長は「燃費に優位性があり、経済性をさらに上げることを重視した」と話す。250メガパスカルの高い噴射圧などが特徴である排気量3000ccの新たなディーゼルエンジンを開発した。同1900ccのエンジンは電子制御を改良した。両エンジンをそろえて従来比2―7%の燃費改善につなげた。
安全性では車体の強化を図った。高張力鋼板(ハイテン材)の採用を増やすなど、ボディー剛性を20%高めた。後側方にいる車両を検知すると警報で知らせる「ブラインドスポットモニター」などの先進安全機能もオプションで用意した。
ピックアップトラックは販売台数そのものだけでない重要な付加価値もある。仕事でD―MAXを使う顧客が耐久性や燃費などの性能を気に入ったとする。いすゞの片山正則社長は「将来、商用トラックを買う時に同じいすゞの『エルフ』を候補に入れてくれるはずだ。ピックアップトラックは商用トラックの先兵的な役割もある」と力を込める。
新型D―MAXの発売を機に、商用車メーカーとしての飛躍にも弾みをつけたい考えだ。(取材=山岸渉)