東レ、「過去最高水準」5000億円設備投資の使い道
東レは2020年度から3カ年の中期経営計画で、設備投資に5000億円を充てる。17―19年度の設備投資は同社過去最高の約5000億円となる見通しで、同額水準を維持する。5000億円のうち3000億円程度を設備新設や既存設備の能力増強に割り当てる。炭素繊維や電池材料、エアバッグ、衛生用品向け繊維素材といった成長分野への投資に重点を置く方針で、収益基盤の拡大を目指す。
長期的な成長には有望事業へのさらなる投資が必要だと判断した。付加価値品への投資をより鮮明にする一方で、新興国と価格競争関係にある汎用品は縮小を検討し、投資も抑制するという。東レは米国やアジアなど海外の売上比率が50%を超えており、設備投資でも総額の60%程度は海外で実施すると見られる。
炭素繊維は、安定した需要が見込める産業用途の製品と成形技術を強化し、自動車の構造部材を開拓する考え。強みの航空機向け高機能製品も、需要は長期的に上向くと見る。
繊維素材は、新興国で消費が拡大する紙おむつ用のポリプロピレン長繊維不織布(PPスパンボンド)や自動車用のエアバッグの生産体制を整備し、重点的に伸ばす。
機能化成品では、リチウムイオン二次電池用のセパレーター(絶縁材)や有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)関連材料を強化するほか、独自の技術を生かせる電子部品用の高機能フィルムも拡大する。
このほか、水処理膜事業への投資も厚くする方針だ。中国では工業用水の需要増加などを背景に水処理膜の引き合いが急速に拡大しており、東レも広東省に大型工場を建設中。得意の逆浸透膜(RO膜)を軸に生産拡大と品質改善を進め、競争力を高める。
次期中計は詳細の検討に入っており、業績目標や事業戦略などを詰めて3月中に公表する見通し。
<関連記事>旭化成の「自動車用シート材」巨額買収、決断の裏に東レの存在
日刊工業新聞2020年1月10日