ニュースイッチ

再生600万回突破の動画を生んだ証券会社の問題意識

再生600万回突破の動画を生んだ証券会社の問題意識

SMBC日興証券公式フェイスブックページより

SMBC日興証券がウェブ上に公開した動画が話題になっている。金融業界のキーワードに挙がる「人生100年」をテーマに、ブランドパートナーのイチローさんの考え方や姿勢に迫る内容で、再生回数は600万回超。情報発信やブランド力を強化する手段がテレビからインターネットに変わりつつあり、若年層との接点を作るためにも今回の動画効果は小さくない。野津和博常務執行役員に、ネット活用のあり方などを聞いた。

―イチローさんが人生を表現したすごろくで遊びながら、インタビューに答える動画を公開しました。
「社会の変化に伴って若い人たちはテレビを見なくなっている。そのため(情報発信などを)根本的に変えないといけないという問題意識を持っていた。イチローさんの言葉には、人の本質を突くような内容が含まれている。真のプロフェッショナルとして見習うことも多い」

―証券のプロの理想型は。
「証券は人生の重要な意思決定や出来事を金融面から後押しする役割だ。資産運用や相続に向けて、顧客が納得する提案力が重要。設備投資やM&A(合併・買収)などの企業活動も支える」

―発信力を高めるにはネットを使うことが不可欠です。
「顧客と対面による情報発信が中心なので、公開した動画を学びの場として、(ネット活用に慣れた)デジタル世代と接点を持つ試みを続ける。知見を積み上げていく」

―ブランド力を磨くことも必要です。
「顧客に寄り添うスタンスが伝統で、プロとして、人として信頼してもらうのが我々のベースだ。投資の本質を伝えていく」

―一方で一般的には投資をためらいがちです。
「投資は簡単にもうける手段というイメージを持たれていると思う。投資は企業へのエールであり、成長すればリターンを得られる。良い会社を見つけて、投資家と結びつけるのが我々の使命だ」

野津和博常務執行役員

【記者の目/資産形成層取り込み課題】

SMBC日興証券は旧四大証券の一角で、外資系の傘下にも一時入ったが、日興ブランドは受け継がれてきた。富裕層への認知度が高いものの、資産形成への関心を持つ若年層への取り込みが課題だ。今回の動画配信をきっかけに、ネットや会員制交流サイト(SNS)などを生かした発信力の強化が求められる。(取材・孝志勇輔)

日刊工業新聞2019年12月27日

編集部のおすすめ