相次ぐ「循環取引」による連鎖倒産、被害者も風評に巻き込まれる恐ろしさ

疑われた企業は理不尽に与信枠を縮小

当然のことながら循環取引のうわさがある企業との取引には注意が必要だ。焦げ付きの発生リスクだけではなく、知らぬ間に自社も連鎖倒産に巻き込まれてしまう可能性があるからだ。

この教訓となるのがシーンズを中核とした循環取引が疑われていた企業らの相次ぐ倒産だ。2019年9月にマルコス(東京都港区)、11月にはmore communication(同渋谷区)など5社が連鎖倒産し、同月29日にシーンズ(同港区)が倒産した。この一連の連鎖倒産により、多くの企業が焦げ付きで不良債権を抱えることになった。なかには被害額が数千万円、数億円という規模に及ぶ企業も出てきており、再び連鎖倒産が発生する可能性も否定できない。

また焦げ付きを負った被害者である債権者には、風評被害という二重苦が待っていることも忘れてはいけない。循環取引をしているか否かは、よほどのことがない限り当事者しか知り得ない。そのため第三者の立場の企業が与信判断する際は「怪しいと思われる企業との取引を警戒する」という曖昧な認識のなかでの対応になりがち。

結果、たとえ、ぬれぎぬだったとしても循環取引を疑われた企業は理不尽に与信枠を縮小されることや取引解消されるケースも珍しくない。急場をしのいでも“循環取引をしていたかもしれない企業”のレッテルを貼られたままの営業活動となり、思うように取引が進まないという悩みは、過去の案件の後日談として聞かれる。

善意の第三者ながら循環取引に巻き込まれた企業への厳しい指摘は、お門違いであるとの声もある。しかし、多くの企業がコンプライアンス順守の観点も含みつつ、与信管理にコストを掛けている点を思えば、循環取引に巻き込まれた企業は、必要なコストを支払わずにトラブルに巻き込まれるべくして巻き込まれたとの見方もできる。今回の件をきっかけに与信管理の重要性を再認識した企業も多いようだ。

(文=帝国データバンク情報部)

日刊工業新聞2019年12月24日

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