「三菱スペースジェット」、結局いつ飛ぶの?
三菱重工業がグループの総力を結集して開発する国産旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」。2019年はブランドイメージの刷新を狙った名称変更や米国の規制に対応した新機種の開発など、攻めの姿勢を鮮明にした。一方、初号機の6度目の納入延期がささやかれ始め、事業化への道のりは一進一退を繰り返している。
「現時点では20年半ばの(納入)目標は変更しない」―。三菱重工の泉沢清次社長はMSJの納期をめぐり「飛行試験のスケジュールを精査している」としたものの、納期厳守への努力を続ける考えを示した。
商用飛行に必要な型式証明(TC)の取得に向けた最終試験機の製造が遅れたため、今秋に予定していた試験を始められていない。三菱重工は最終試験機の完成を20年明けとするが、20年半ばの納入には不透明感が漂う。
半面、事業化への地ならしは着々と進めている。MSJが区分されるリージョナル機の最大市場の米国深耕に向け、6月に70席級の新機種「スペースジェットM100」の開発を公表。23年の完成を目指す。M100の開発には米航空会社とパイロット組合の間で結ばれた労使協定で、座席数などを制限する「スコープ・クローズ」が背景にある。
MSJ開発の実務を担う三菱航空機(愛知県豊山町)の水谷久和社長は「(座席数制限などの)緩和が期待されていたが、状況変化が起きずに今に至っている」と認識。競合のブラジル・エンブラエルの最新機種は現状の制限基準を満たしていない。M100は基準を達成しており、高い優位性を確保できる。
加えて、三菱重工はカナダ・ボンバルディアから小型機「CRJ事業」を買収。課題のメンテナンスなどアフターサービス体制を整備する。三菱重工はMSJの開発に約6000億円を投じており、納期の遅れは収益化の足かせとなる。離陸に向けた視界は良好とはいえず、MSJ事業の正念場は続く。
(取材=名古屋支社・長塚崇寛)