東大でエボラワクチンの治験が始まる
東京大学医科学研究所の四柳宏教授、河岡義裕教授らは5日、エボラワクチン「iEvac―Z」の第1相臨床試験を、今月から同研究所付属病院で開始すると発表した。iEvac―Zは、遺伝子の一部を欠損した変異エボラウイルスから作製した不活化ワクチンのため、高い安全性が期待される。アフリカなど急性熱性疾患「エボラ出血熱」の流行地域での利用や、流行地域に行く医療従事者への使用を想定している。
エボラウイルスの感染によって引き起こされるエボラ出血熱は、突然の発熱とともに痛み、脱力感などのさまざまな症状が生じ、致死率50―90%を示すウイルス種も存在する。
研究チームは、エボラウイルスの増殖に必須のたんぱく質「VP30」を作る遺伝子を欠損させた変異ウイルスを作製した。このウイルスは通常の細胞では増殖しない。ワクチンでは、このウイルスを不活化させて用いるため、高い安全性が期待できる。サルへワクチンを接種したところ、エボラウイルスに対する抗体ができていることが確認できた。
試験では健康な成人男性にワクチンを4週間の間隔で2回投与して安全性を評価する。四柳教授は「一般的に起きうる重篤なアレルギー症状などの副作用は想定されるが、iEvac―Z特有のものはまだ報告されていない。流行地域の医療従事者など、感染リスクが高い人への使用を想定している」と説明した。
日刊工業新聞2019年12月6日