「オンライン服薬指導」解禁で直面する課題
薬剤師がオンライン上で服薬指導をできるようにすることなどを盛り込んだ改正医薬品医療機器法(薬機法)が成立した。服薬指導は現在、対面が義務付けられているが、インターネットを介したテレビ電話などを利用して患者に薬の飲み方を教えることが可能になる。改正法に対しては、患者の利便性向上や効率化による医療費抑制を期待する声が大きい。一方で、対面と同水準の指導を行えるかが課題になりそうだ。(取材・小野里裕一)
【1年内に施行】
服薬指導は、薬の適切な使用を促すことを目的に、薬剤師が患者に対して処方薬の情報提供を行うもの。現状では原則として対面による指導が義務だが、「かかりつけ薬剤師」が指導を実施するなど一定要件の下で、スマートフォンのテレビ電話などオンラインによる服薬指導を解禁する。1年内に施行される。
これに対して、調剤の現場からは患者の利便性向上を期待する声が上がる。関東で調剤薬局のみそら薬局(千葉県流山市)を経営する新井孝志社長は、オンライン服薬指導の解禁で、「提供できるサービスが大きく広がる可能性がある」と指摘する。
テレビ電話による服薬指導を録画すれば、患者が指導内容を忘れた時に簡単に見返すことができ「薬を間違えて服用するリスクを減らせるのでは」(新井社長)と話す。また患者が録画を何度でも確認できることで「医療機関への問い合わせが減る」(同)と説明。高齢化の中で医療の質を維持するため、こういった効率化は不可欠だと訴える。
【受診困難患者増】
大阪府内で4店舗の薬局を運営するコルサポート医療企画(大阪府和泉市)の橋本佐和子社長も、高齢化などで「医療機関を受診するにも、体力や移動手段などの面で困難な患者がますます増える」と指摘。服薬指導のオンライン化はメリットが大きいと説明する。
一方、オンラインで対面と同水準の服薬指導を行えるかが課題となりそうだ。
調剤薬局向けのシステム開発を手がけるソラミチシステム(東京都新宿区)の田浦貴大社長は「対面ではないと、(きめ細かなサービスに必要な)患者の表情や顔色などが分かりづらくなる」と指摘。オンラインの服薬指導では、専用のアプリなどを活用しながら、患者の病歴や過去の副作用情報、検査値、他に服用する薬がないかなどを的確に把握することがこれまで以上に重要になるという。
【課徴金制度も】
改正法では、虚偽・誇大広告によって医薬品を販売した製薬会社や流通会社などに課徴金を課す制度も新設する。違反業者から売上金の4・5%を徴収するもので、違反を自主報告した場合は課徴金を半額にする。医薬品だけでなく、医療機器なども対象だ。
新制度は、製薬大手ノバルティスファーマによる高血圧治療薬「ディオバン」の論文におけるデータ改ざん事件を受けて導入されることになった。
売上高1000億円を超える大型薬で違反が見付かった場合、課徴金は数十億円規模になる可能性があるが、ある製薬首脳は「もともと法律にのっとって厳格に事業運営している。新制度で抑止力が働くことは良いことだが、影響はない」と冷静に受け止める。