日本IBM、AI活用の気象予報を進化させる!
日本IBMは米IBMの戦略に沿って、企業向け気象予報サービスを拡充する。サービス基盤となるグローバル気象予報システムの刷新に伴い、IBM傘下の「ザ・ウェザー・カンパニー」部門が提供する気象予報サービスの予測精度や更新頻度などを順次、従来比6―12倍に高める。人工知能(AI)「ワトソン」による分析・予測機能を組み合わせ、電力などの公益事業や損害保険、運輸・物流業、航空業、小売り業などで新展開を目指す。
ザ・ウェザー・カンパニーはIBMが2016年に買収した気象情報サービス会社。国内では日本IBM内に「アジア太平洋気象予報センター」があり、気象予報士が24時間365日常駐して、17年から企業向けに気象予報サービスを提供。
サービス強化の目玉となる気象予報の新しいモデリングシステム「GRFA」は、世界規模でこれまで利用できなかった詳細さと高い頻度で、最大12時間前に天候状況を予測できるという。
従来型のシステムは心臓部に中央演算処理装置(CPU)のみを配置していたが、新システムは画像処理プロセッサー(GPU)を組み合わせた新しいアーキテクチャー(設計概念)に切り替え、解像度の向上と更新頻度の増加を実現した。
CPUとGPUの組み合わせは世界最速のIBMのスーパーコンピューターで採用する構成。GPUは米エヌビディア製、CPUはIBMの最新プロセッサー「パワー9」を組み合わせた。
既存型の気象モデルは10平方キロメートル、15平方キロメートルが対象で更新は6―12時間ごと。これに対して、GRFAは1時間ごとに3平方キロメートル単位で高解像度で更新できるとしている。
GRFAは世界中で同一水準の気象データの利用が可能。気象衛星や独自の観測点から得たデータを活用し、観測点の少ない国や地域においても精度の高い予報を実現する。
提供するデータは露点温度や湿球温度、地表気圧、1時間当たり降水量、平均海抜レベルの気圧、最大瞬間風速など。風冷温度や体感温度、散乱日射量、直達日射量は他にはないという。