日本発IoTが世界で成功するには―「Tech in Asia 2015」
日本におけるIoT:現代は近未来の様相を呈するか?
日本でダメでも世界で評価される可能性
ウッザマン ここで話を少し変え、シリコンバレーの農業IoT「EDYN」を紹介します。庭にセンサを設置し、アプリをダウンロード。センサから庭の状況がスマホに送られ、水やりの管理ができます。データの蓄積によって、この庭に何を植えたらよいかまで教えてくれます。現在ホームセンター約400店で販売されているんです。
砂金 これ、日本でいう「SenSprout」ですよね。
小笠原 銀ナノインクで紙の上にアンテナを描き、電波をあてて電源供給しEDYNのようにデータを取ります。ただ、IoTでは何かを解決することが期待されるものです。日本はあまり乾燥しないので乾燥地帯の多いアメリカほどニーズが多くない。同じ製品でも、日本で評価される前に世界で評価されるものがあるかもしれませんね。
ウッザマン 日本ではIoTスタートアップはどのような状況にありますか。
砂金 世の中でフォーカスが当たりがちなのが、今までIT関係のことをやっていた人たちがハード分野に乗り出すパターンです。ここからすごく新しいものが出てくる可能性は低いんですが、ちょっと面白いものが出てくる。一方、今まで技術開発を長くやってきた大企業や大学がIoT文脈でいきなり花開くパターン。これはグローバルで勝負でき、成功の可能性が高い。
小笠原 要素技術やR&D、たとえばインフラ周りなど可能性がありますね。でも事業化まであと一歩足りないなという感じ。日本国内だけのニーズを考えず、海外まで考えを広げてみては。
これから来るのはヘルスケアと農業
ウッザマン では、世界でIoTがどのような状況にあるのかを見ていきたいのですが、2020年までに500億のデバイスがインターネットにつながる可能性があり、それによる効果が200兆円といわれています。このマーケットは既存の会社が採りに行く必要があると思いますね。
砂金 IoTはソフトウェアではなくすべての産業において起こりうることです。今までソフトウェア、ハードウェア屋が「ここはうちの領域じゃない」と作っていた壁を壊すことになります。
小笠原 いろいろなものの再発明が行われ領域が広がっていくでしょうね。
ウッザマン アメリカではグーグル、アップル、そしてサムスンがIoT系企業を買収してさかんに事業を進めています。日本ではどうでしょうか。
砂金 日本の大企業はもっと頑張ってほしいですね。
小笠原 日本のスタートアップにも海外からいち早く投資がされていますが、日本からはまだなかったり。
砂金 デバイスを作るだけでは意味がない。データのプラットフォームを取ろうとする動きがもっとあってもいいと思うのですが、その観点が弱い。
ウッザマン 開発者がIoTにどうかかわるべきか、どうフォーカスすべきか教えてください。
小笠原 自分の身の回りのものにセンサを付けた場合、どんな新しい価値を生むか想像してみることが第一歩だと思います。これからほぼすべてのものにセンサがついて、情報が取得できるようになります。これをどう活用するかが人間の仕事になってきます。
砂金 センサ情報をリアルタイムに処理、把握できるというところを考えてほしい。ここにフォーカスして想像すると新たなことが見えてくるのではないでしょうか。
ウッザマン シリコンバレーでは、これから伸びそうなIoT分野としてヘルス、工場、小売、農業分野が挙げられます。日本ではどうでしょう?
砂金 ヘルス部門は必ず伸びますね。日本でキネクトが発売されたとき、「手術中にパソコンが操作できるのでは」と医師が興味を持ったんです。日本の医師は10年前に比べIT活用に積極的な人が増えていて、新たしい提案を待っています。
小笠原 農業用ロボットとIoTの組み合わせは早いタイミングで結果が出るんじゃないかなと思います。