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九電・川内原発、今日にも営業運転開始 電力料金は下がる?地元経営者の声は?

九電・川内原発、今日にも営業運転開始 電力料金は下がる?地元経営者の声は?

九電の15年4―9月期は当期損益が450億円の黒字になる見通し(会見する瓜生社長=4日)


九州の産業界は歓迎−国際競争力保つために


 川内原発の営業運転再開を九州の産業界は歓迎している。日刊工業新聞社は沖縄を除く九州7県の企業経営者に緊急調査を行ったところ、長期の原発休止は日本のモノづくり産業を疲弊させると懸念する声が大勢を占めた。一方で中・長期的には、太陽光や風力など再生可能エネルギーの比率を一定量に高めるべきだとの声が相次いだ。

 北九州商工会議所の利島康司会頭(安川電機特別顧問)は「原発が稼働しなければ日本のエネルギー問題は解決しない。電力がなければモノづくりはできない」と再稼働を歓迎する。ただ九州電力には地域が安心できる管理運営を要望するとした上で「将来は風力発電など再生可能エネルギーの比率を一定量まで上げなくてはならない。北九州市は響灘地区にエネルギーの一大基地を建設予定だが、地元企業も参画して成功モデルを作りたい」と、新ビジネス創出に意欲をみせる。

 川内原発が立地する鹿児島県内で営業運転を批判する声は聞かれなかった。さつまファインウッド(鹿児島県霧島市)の林雅文社長は安全性確保が前提と前置きした上で「電気料金の引き上げは製造コストに関わる」と歓迎。フジヤマ(鹿児島市)の藤山和久社長も「(再稼働は)やむを得ない。ただ将来は原発に依存しない新エネルギーの供給に期待」すると話した。

 ほかにも「国際競争力を維持するためには必要」(清本鐵工・清本英男社長=宮崎県延岡市)、「国力はエネルギーの使用量で計られる」(リョーワ・田中裕弓社長=北九州市戸畑区)、「電気代が下がれば円安と併せて国内回帰が加速する」(三浦造船所・三浦唯秀社長=大分県佐伯市)などが続いた。

 また「原発の必要性を丁寧に説明し、安心させてほしい」(筑水キャニコム・包行均会長=福岡県うきは市)、「廃棄物処理で後世に負担をかけないようにしてほしい」(田名部製作所・田名部淳社長=同筑後市)、「将来はドイツのように計画的に減らす目標を掲げた方がよい」(本多機工・龍造寺健介社長=同嘉麻市)、「廃棄物や汚染が心配なので厳しい安全管理が必要」(プレシード・松本修一社長=熊本県嘉島町)など、国や電力会社への注文もあった。

 一方、玄海原発(佐賀県玄海町)近くに立地する日本建設技術(同唐津市)の原裕社長は「事故発生時の避難経路などが住民に徹底されておらず、不安がぬぐえない」と不満を漏らす。ほかにも「安全確保が最優先では」(タカギ建設鋼業・牛島満子社長=長崎県大村市)、「福島原発は解決の糸口すら見えていない」(ワークス・三重野計滋社長=福岡県遠賀町)、「皆が痛みを分かち合ってでも、目先の利益より子供たちの未来を考えたい」(大阪精密行橋工場・北野綱一社長=同行橋市)など、営業運転不支持の声も聞かれた。

日刊工業新聞2015年09月10日最終面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
九州では電力料金の低さを背景に、半導体や自動車といった基幹産業が根付いた一面もあります。その競争力を今後も維持するには、引き続き原発を安全に再稼働していくことが求められると思います。

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