空調×AIでグーグルが参入したら?ダイキン会長が考える新たな競争軸

井上礼之氏「人の力が企業の優位性を生む」

  • 1
  • 4
 人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)が進歩し、車ならば自動運転、金融なら顧客サービスをAIが担う世界観が見えつつある。しかし当社が手がける空調はまだ未来を見通せない。これをリスクと見る向きもあるが、経営の視点ではむしろチャンスだ。AIとIoTを駆使し冷暖房による室内の快適さや健康、安心、安全の新たな価値を提供するソリューションを生み出せば、世界に不可欠な存在になれる。

 空調は米国で誕生してから約100年の間に生活様式を変え、高層建築の基礎技術となり都市化を促し、世界の人口動態に大きな影響を与えてきた。シンガポール建国の父、リー・クアンユー元首相が「20世紀最大の発明はエアコンである」といったという。

 未来にはAIやIoTと結びつきライフスタイルを大きく変える可能性を秘めている。グーグルなどのIT企業がその価値に着目し異業種が参入すれば、競争環境は激変するだろう。

 激動の時代に当社がイニシアチブを取るにはこれまでにない人材を育てなければならない。2017年には社内で「ダイキン情報技術大学」を開講し、大阪大学の教授による指導でAI・IoTにたけた社員を養成している。新入社員のうち100人は、2年間業務から離れ情報技術大学で勉強に専念する。

 ただ、ビックデータの解析やビジネスの価値を創出するデータサイエンティストは専門性が高く、育成は難しい。このため外部からも優秀な人材を獲得しなければならないが、世界中で人材の奪い合いが起き簡単ではない。

 当社の魅力を感じてもらえるよう、従来の人事制度や処遇体系に固執しない仕組みづくりを進めている。キーワードは多様性だ。業務の委託や契約、期間限定の高額報酬で高度なミッションに取り組んでもらうなど多様な雇用形態を持ち、使い分けることが重要だ。

 AIやIoTの時代こそ「人の力」が大事になる。ITの最先端企業ほど人の交流から生まれるアイデアやモチベーションを重視するという。知恵を絞り会社に来たくなるオフィスのあり方を考え、フェース・ツー・フェースも大事にしたい。

 AIと人は対立しない。AIはツールとして有効だが経営の重要な判断や決断、課題の提案、価値の創造は人間にしかできない。データ重視の時代こそ、好奇心や向上心、反骨心など人の感情に由来する力、すなわち人の力が企業の優位性を生むのではないか。企業のAIやIoTはともすれば技術論に偏るが、経営者として心すべき観点だと考える。

<関連記事>
創業事業「白熱電球」から撤退、ヒーターに勝負を賭けた愛知の実力企業

日刊工業新聞2019年10月30日

関連する記事はこちら

特集