重工大手が相次ぎ協業、スタートアップ囲い込み合戦に

専門技術に魅力

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IHIは横浜事業所にスタートアップとのコラボ施設を開所している
 国内重工大手が、創業間もないスタートアップとの連携を加速している。IHIと川崎重工業の2社は米国シリコンバレーに本拠地があるオサロと相次ぎ業務提携し、物流ロボットなどの分野で製品開発を目指す。プラント大手のJFEエンジニアリング(東京都千代田区)は、人工知能(AI)ベンチャーのエニーテック(東京都文京区)を買収、子会社化した。三菱重工業も取り組みを進めており、特定分野技術に強みを持つスタートアップを囲い込む動きはさらに強まりそうだ。

 IHIと川重の2社が着目するオサロの強みは、深層学習(ディープラーニング)を生かした物体認識技術。ロボットにこれを搭載すれば形状や重さ、硬さが異なる品物を1個ずつ識別し、箱に詰める作業などの自動化が容易になる。コンビニエンスストアやeコマース市場の拡大で、物流現場における多品種少量の配送需要が高まっている。川重は今回の提携を機に「組み立てや物流ロボットに加え、将来は輸送システムやエネルギー分野の商品でも自動化を進めたい」と話す。

 JFEエンジが買収したエニーテックは、液体力学の知見を生かして独自に開発した水質判定AI技術が強み。水処理施設やバイオ医薬品、飲料工場などに納入実績があり、JFEエンジのプラントとの相乗効果が期待できる。JFEエンジはこのほか、100億円規模のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も近く設立予定で、スタートアップとの交流を加速させる考えだ。

 環境装置やプラント、航空宇宙、造船、搬送機械など幅広い事業分野がある重工メーカーが、特定技術に強みを持つスタートアップと交流する利点の一つは“スピード感”。横浜事業所(横浜市磯子区)内にスタートアップやベンチャーとの交流ラボを開設したIHIは「研究開発のスピード感が魅力」と語る。思いついたアイデアを3Dプリンターや試験設備でその場で具現化し、形にするような商品開発は大企業では実現しにくい。

 2018年から東京・丸の内のオフィスフロアを借りて協業活動を進める川重も「スタートアップやベンチャーに本社へ来てもらう形だと堅苦しい話になりがちだが、ここなら自由な雰囲気で気軽に開発の話ができる」と“平等の雰囲気”の利点を強調する。

 一方、川重は「スタートアップの技術水準はピンキリで、正直、単なる売り込みの話もかなりある」とも明かす。自社の商品や事業に本当に役立つかどうか、見極める審査能力も求められている。(取材・嶋田歩)

日刊工業新聞2019年10月30日

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