ニュースイッチ

JINSの「集中力」がアップするオフィス、数々の仕掛けとは?

JINSの「集中力」がアップするオフィス、数々の仕掛けとは?

観葉植物を多数配置したワークスペース

 眼鏡販売店「JINS」を手がけるジンズは、従業員が集中して仕事に取り組める場として「Think Lab(シンク・ラボ)」を2017年から運営している。観葉植物を多数配置するなど、オフィス特有の堅苦しさとは無縁の雰囲気を醸成。普段の職場とは異なる環境に身を置くことで、作業効率の向上やアイデアの創出といった効果を引き出している。

 シンク・ラボの構想を練り始めたのは開設の約1年前のこと。座る机がフリーアドレス制で、小部屋との仕切りをガラス張りとするなど開放的な雰囲気がある同社のオフィスは「コミュニケーションやコラボレーションの活発化に有効だった半面、周りが気になるとの意見があった」(堀友和管理本部総務・労務グループマネジャー)。

 ちょうどそのころ、東京都千代田区のビルにある本社階下を賃借し、オフィスを増床する計画が浮上。従業員の働きやすさをテーマに拡張スペースの活用方法を検討することになった。二番煎じではなく新しいテーマを模索する中、「集中力」をコンセプトとして採用することが決まった。

 設計やデザインの面で参考にしたのは神社仏閣。鳥居をくぐって参道を歩き、本殿に着くまでに心を整える―。こうした一連の流れと同じ雰囲気を利用者に体感してもらうのが狙いだ。例えば入り口は黒い壁に囲まれており、光がかすかに差す程度の明るさ。デスクがある空間に行く前にこの暗闇を通ることで徐々に集中力を高める効果を狙っている。

 床面積約1390平方メートルの大半を占めるのは、デスクが並ぶオープンスペース。ここでは五感に働きかける演出を施している。川のせせらぎや小鳥のさえずりが聞こえ、森林の香りを嗅ぐことで良質なリラックスの状態に近づけるのが目的。照明は時間帯によって色合いや強度を変え、利用者のパフォーマンスの乱れを防ごうとしている。

 レイアウトや家具に関しても工夫を施した。視界に入る緑の割合「緑視率」が安らぎ感に影響を及ぼす点に着目し、観葉植物を多数配置。利用者同士が視線を合わせて集中が途切れることがないように、机はすべて同じ方向に設置した。作業の効率性の追求やアイデアの探索など仕事内容に応じて、角度が異なる椅子を選択できる。

 開設から間もなく2年。プロジェクトの資料作成などに使うことが多く、本社に在籍する従業員約200人のうち利用率は80%程度に達した。業務効率の向上によって、残業時間の減少につながっている。

 ジンズはシンク・ラボを社内で活用するだけでなく、会員制のワークスペースとして社外にも開放している。「社内外から使いやすいとの評価を得ている」(同)という。

 半面、「オープンスペースに仕切りを設けた方がより集中しやすい可能性がある」(同)と指摘。集中力を測定する自社の眼鏡型端末「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を活用しながら、さらに働きやすい環境づくりを目指している。
打ち合わせ可能なラウンジやカフェを併設している

(取材・群馬支局長・古谷一樹)

<関連記事>
“コミュニケーション地獄”な職場。「集中」を保つ4つのポイント

日刊工業新聞2019年10月30日

編集部のおすすめ