飛騨の森で続々産業創出!東京では得がたい価値

異質のコラボで相乗効果

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ユーザベースに納入した“巨大”家具。打ち合わせや子どもの遊び場として使われる(六本木、撮影KazueKawase)
 東京・渋谷でデジタルものづくりカフェを運営するロフトワークが、岐阜県飛騨市で木材加工に携わって4年。市などと設立した会社は売上高300万円からスタートし、1億円が見通せるまでに成長した。若者の街と地方都市、先端技術と成熟産業といった“異質同士”の組み合わせで地域資源を付加価値のある商品に変え、地域に産業を創出した。

 ロフトワークは来店者が3Dプリンターを使ってモノづくりができる「ファブカフェ」を世界10拠点で展開する。他にもデザイナーやクリエーター(創作者)と企業との交流やアイデア創出の場を提供している。

 その同社が参画する企業名が「飛騨の森でクマは踊る」(通称ヒダクマ)だ。飛騨市、林業再生業のトビムシ(東京都港区)との3者で2015年4月、市内に設立した。業務は飛騨産の木材製品の開発。デザイナーや創作者が感性とデジタル技術を駆使し、試作品を作る。実際の製作は木工や金属加工業者に依頼し、完成した商品を顧客に届ける。

 ヒダクマが扱う広葉樹は色や形がふぞろいで、工業製品には不向きというのが常識だ。だが、岩岡孝太郎ヒダクマ社長は「先人が知っていた木の機能に着目した」と語る。抗菌性や耐水性などの持ち味を生かすと、調理器具や食器など適材適所の使い方がある。「デザイナーの視点を与える」(岩岡社長)ことで、意匠性のある商品もできる。

 くつろげるオフィス家具を求める都市部の企業から注文が増え、「倍々で仕事が増えている」(同)。当初の木材の扱い量は年1立方メートルだったが、19年は50―60立方メートルとなりそうだ。製作を依頼する業者も飛騨市内を中心に70社まで増えた。

 ヒダクマが都市に集中する創作者や顧客と地方を結びつけた。そして地域資源の広葉樹を商品に変え、地元70社に新しい仕事をもたらした。売上高は小さいかもしれないが、地域経済に大きな貢献をしている。


ワクワクが魅力


 「予定調和でなかったから、ここまできた」。ロフトワークの林千晶代表はヒダクマの軌跡を語る。当初、会社設立に乗り気ではなく、飛騨市役所などの誘いを受け「旅行気分で行ってみよう」と出かけたという。冬、飛騨の民家で解凍した山菜を食べた時、全国から運ばれる野菜をいつでも購入できる生活は「東京ルール」と実感した。そして「東京では得られないものがある」と魅了され、進出を決めた。

 岩岡社長は「国内の都市にファブカフェを出店しても渋谷のコピーになるだけ。飛騨なら違うものになると想像するとワクワクした」と振り返る。飛騨の古民家を改修したヒダクマのファブカフェは宿泊ができる。海外から建築やデザインを学ぶ学生など年200人が訪れ、宿泊もするので飛騨の魅力を世界に伝える役割も担う。

 ヒダクマは起業の成功条件を満たしていなかったが、林代表は「おもしろいことができる」という意欲が原動力だったとする。ヒダクマは地域課題解決ビジネスを目指す企業や起業家に多くのヒントを与えている。

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