「キャッシュレス・ポイント還元」、参加店舗の出足鈍く

当初の参加店舗数は50万店程度、囲い込み不発も

 消費増税に伴う経済対策として「キャッシュレス・ポイント還元」が1日、始まった。消費者は対象店舗でクレジットカードや電子マネーなどで支払うと、5%または2%のポイントが還元される。ただ当初の参加店舗数は50万店程度。制度の対象は約200万店あるとされ、出足が好調とは言い切れない。決済事業者は競争が激化する中で自社の決済手段を使い続けてもらうための施策も求められ、正念場が続く。

 「少ない」。大手カード会社の首脳は表情を曇らせる。経済産業省によると、10月1日からキャッシュレス・ポイント還元事業を開始できる加盟店数は約50万店。9月25日時点の登録申請数は約73万店であるため、今後に審査を通過してポイント還元を始める店舗も増えそうだ。それでも足元では未申請の店舗が過半数を占めると考えられ、必ずしも楽観できない。

 対象店舗は決済手数料や決済端末の補助などを受けられる。だが制度の理解や導入には労力が必要で、申請が行えていない店舗も相当数あるとみられる。前出のカード会社首脳は「開始済みの店舗に触発されて今後検討を進めるケースもあるはず。急に申し込みが増えた場合でも(自社は)スムーズに対応できるようにしたい」と気を引き締める。

 各決済事業者は需要の喚起に懸命だ。JCBは10月1日から全国複数地域でキャッシュレス決済の利便性を体験できるイベントを開く。同社はスマートフォンで決済を行った人に20%の現金を還元する施策も12月15日まで展開。スマホ決済ではNTTドコモやペイペイ(東京都千代田区)も20%還元を実施または予定しており、競争が過熱しつつある。

 ただ、決済事業者が一度囲い込んだ顧客をいつまでもつなぎ留められるとは限らない。大胆なキャンペーンは費用の面から考えても期間や条件を限定せざるを得ない上、中長期的に収益を確保し続けられるかは別の話だ。

 還元率1%台後半のクレジットカードを展開していたことがあるノンバンクの幹部は、「(金利の高い)キャッシングやリボルビング払いを使ってもらいたかったが、うまくいかなかった」と振り返る。クレカの還元率は0・5―1%が主流である中、高還元率で会員を増やしてから別の金融商品でもうける戦略だったが、還元率だけが目当ての利に敏い消費者は少なくない。

 不正利用対策も課題だ。日本クレジット協会によると、19年4―6月におけるクレカの不正利用被害額は前年同期比17・5%増の68億5000万円だった。

 利用者の層が広がればその分、リスクは増す。スマホ決済も「セブンペイ」が機密性の不備により9月末で終了に追い込まれたことは記憶に新しい。

 キャッシュレス・ポイント還元事業は20年6月までの予定だ。その後も安全で便利な決済環境を提供できるのか。多様な関係者の知恵と努力が問われ続ける。
(取材・斎藤弘和)

日刊工業新聞2019年10月2日

  

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