松屋社長「小売業界が『内税方式』を検討すべき」理由

松屋社長・秋田正紀「国の将来を考えると増税やむなし」

 10月1日に消費税率が8%から10%に引き上げられる。当社のような百貨店業界を含む、小売業界にとっては強い逆風になる。9月は高額商品を中心に駆け込み需要もあり売上高は対前年同月を上回るだろうが、10月は厳しい数字になるのは間違いない。

 商売人として消費増税を歓迎する方は少ないだろう。私も百貨店の社長としては大手を振って賛成とは言いにくい。しかしながら、国の将来を考えると増税やむなしというのが率直な思いだ。

 問題は、税金を上げることではない。税金が何に使われるか、なぜ消費増税が必要か国民に説明責任を十分に果たしていないところにあるだろう。

 税金と聞くと召し上げられているという被害者意識を持つ国民は昔から少なくないかもしれない。これも税を取られることよりも、どのように税金が使われているかをきちんと説明してこなかったことが大きいのではないか。国民が増税に理解を示さないとなると、消費を必要以上に控えることにもなりかねない。我々の商売にも直接跳ね返ってくる。

 政府は、2025年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化させる目標を掲げるが、消費税率を引き上げたところで、現状では達成は難しく映る。安倍政権は当面は消費税率を引き上げないと公言しているが、果たして、現実的にどこまで維持できるだろうか。

 中長期的に消費税が段階的に引き上げられる可能性を視野に入れれば、小売業界は税込みの表示方式を検討するのも一つの手だ。日本では商品を買った金額に外税が足され、購入後に「消費税をこれだけ払ったのか」という心理が消費者に働く。一方、日本以上に消費税の高い国では、税負担を意識しにくい「内税方式」が採用されている。

 消費者により近く、単価が低いコンビニエンスストアやスーパー業界は内税方式には反対姿勢だ。確かに内税を導入すれば、一度は痛みを味わうかもしれないが、消費税が変わるたびに値札や料金表を書き換えたり、大がかりにシステム更新したりする必要もなくなる。検討の余地は大きいのではないだろうか。

 誤解してほしくないが、消費税のさらなる引き上げが急務だと主張したいわけではない。国の財政が悪化することで最終的に困るのは我々国民だ。目先の利益にとらわれない議論を始めるべきだろう。そのためには国民一人ひとりが税への関心を持つことが重要になる。

日刊工業新聞2019年9月26日

  

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