中国のロボコンは「堅牢性の壁」をいかに乗り越えてきたか

【連載】中国ロボコンの巨大エコシステム #4

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チームの控え室で細かな調整に打ち込む
 技術開発コンテストの課題はシステムのロバスト性(堅牢〈ろう〉性)だ。多くのロボットコンテストでは本番だけ動くロボットが散見される。ハッカソンは審査員の前のデモでさえ動けばいいというシステムが大半を占める。コンセプトで勝負するため、完成度は低くてもイベントは成立し教育にもなる。中国DJIのロボコン「ロボマスター」は試合数が多く長期戦になる。必然的にロバストな機体が開発される。これは地区大会や地方イベントで地域にロボットを紹介する際に強みになる。(取材・小寺貴之)

 「参加チームの技術には大きな差はない。ロバスト性や細かな作り込みが勝敗を左右した」と包玉奇ロボマスター技術責任者は振り返る。ロボマスターは試合数の多さが特徴だ。中国・国内のチームは北部と中央、南部の三つの地区大会を経て、深圳市での決勝トーナメントに進む。決勝トーナメントでは中国のベスト24と国際参加枠、ワイルドカード枠など32チームが競う。

 ベスト16や8、4とチーム数が半減するたびに、半数は順当に勝ち上がり、残りの半数は敗者復活を含めて試合数を重ねる。優勝した東北大学は負けなしで5回戦、2位だった上海交通大学は7回戦を戦った。

 各回戦で3ラウンド2試合先取か、5ラウンド3試合先取で戦う。最低でも12回勝たないと優勝はない。本番一発勝負のロボコンとは違うレベルのロバスト性が求められる。日本では本番でさえ動かないロボットが続出する。

 東北大は試合の合間の3分間の調整時間で、消耗部品を交換できるよう機体を設計した。東北大の王法●(●はしめすへんに其)リーダーは「調整時間は短く、簡単な交換作業しかできない」と振り返る。機構の消耗を特定の部品に集めて、劣化部分を丸ごと交換すれば、裏で細かな修理ができる。

 機体メンテナンスは体力勝負になってしまう課題がある。ロボマスターでは全方向に走るため車輪は「メカナムホイール」が採用される。地上ロボ5台分、最低20枚が要る。日本から参加したフクオカニワカチームの花守拓樹リーダーは「ホイールが2―3試合で消耗してしまう。完成品を買うと一つ1万円以上する。それを10枚、20枚と積み上げるチームもあった」と振り返る。

 東北大はドローンのジンバル機構は3Dプリンターで作製し、会場でスペアパーツを自作できる環境を整えた。以前はロボットは壊れると、もう競技に参加できなかった。包玉奇技術責任者は「消耗を前提にして、3Dプリンターで安定したメンテの仕組みを作った功績は大きい」と評価する。

 ロバスト性のみを追求すると機体が角張ってごつごつする。デザイン性が損なわれがちだ。日本のロボコンでは競技の戦績とは別にデザイン賞を設ける。結果、デザイン勝負と競技勝負のチームが分かれてしまう課題があった。ロボマスターでは優れたデザインを表彰し、チームに調整時間を延ばせるタイムカードを与える。この1枚が勝敗を左右する。勝つためにデザインとロバスト性の両立を追求させている。(全6回)

日刊工業新聞2019年9月13日(ロボット)

COMMENT

小寺貴之
編集局中小企業部
記者

 ロボマスは大会を始めてたった5年で、大学生のつくるロボットがロバストになりました。日本のロボコンでは「毎年作り手が変わるコンペ一回きりの学生ロボットでは無理だ」と聞かされていました。やればできるのに、やらなかったのだと思います。テーマを大きく変えずに、技術をシェアして蓄積するように全体を運営して、実現されてしまいました。DJIは開発した技術をオープンソース化すると優れた技術には賞金を出し、各チームが取り入れられるようにサポートしています。これは大会運営や観客のためだけではありません。チームの中に技術を継承して蓄積する仕組みを整え、先輩の技術をフル活用するマネジメント法は、会社に入ってからも必ず役に立ちます。即戦力になる人材がたくさん輩出されると、中小企業やスタートアップなどの、小さく教育体制が整えにくい事業者が恩恵を受けます。この仕組みを日本は早く導入しないと差が開いてしまうと思います。

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