樹木希林さんが世を去って1年、故人が生き続ける言葉

 女優の樹木希林さんが世を去って、15日で早くも1年になる。なぜか、いまだに亡くなった気がせず、悲しみが湧いてこない。

 この1年、多くの書店で故人の本を見かけた。それも亡くなった気がしない一因だろう。行きつけの書店のベストセラーコーナーにも、故人に関する本が3冊並んでいた。一冊手に取り、その疑問が解けたような気がした。

 「私の場合は特に生と死に関して境がないような感覚があるんですよ」(文春新書『一切なりゆき 樹木希林のことば』より)。ドラマや映画での独特の存在感を放つ演技から、その死生観に知らず知らず影響を受けていたのかもしれない。

 松下幸之助さんにも同様のことが言えないだろうか。いまだに書店には故人の本が多数並ぶ。生前に設立した人材育成塾「松下政経塾」は、今なお各界に優秀な人材を輩出する。薫陶を受けた製造現場からは、その息づかいが感じられるようだ。

 くだんの書籍で樹木さんは、彼の岸と書いて彼岸、こちら岸と書いて此岸(しがん)とすることに触れ、「要するに生きているのも日常、死んでいくのも日常」と説く。樹木さんの死生観には及びもつかないが、人生の幕を閉じる時は、せめて家族を悲しませない自分でいたいと思う。

日刊工業新聞2019年9月13日

  

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