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日立のシステムインテグレーターは生き残れるの?

日立システムズ・北野昌宏社長に聞く「新興国に追い抜かれる危機感がある」
 日立システムズが人手不足に悩む顧客企業に対し、最新の統合業務パッケージ(ERP)提供をはじめとするIT化提案で業績を上向かせている。さらに、クラウド基盤やERPが頻繁に更新される中、それらに接続する周辺システムの過度なカスタマイズを避け、更新に即応できる新たなシステム構築事業者(SI)像を模索している。戦略を北野昌宏社長に聞いた。

 ―2021年度までの新たな中期経営計画がスタートしました。期間中の経営環境をどう見ていますか。
「19年4―6月期の売上高は前年同期を超えた。国内では独SAPの統合業務パッケージ(ERP)を利用する企業の『S/4HANA』への移行や『ウィンドウズ10』への切り替えなどITニーズは多分にある。深刻な人手不足を背景にITで生産性を高める取り組みも加速している。楽観的な見方をすれば勢いは続く。ただし、米中の貿易摩擦が不安材料だ。工作機械や半導体産業などに影響すれば企業はIT投資を抑制する」

 ―中計の狙いは。
 「SIそのものを変える必要がある。例えばERPはアドオン(機能追加・拡張)やカスタマイズが多い。ERPの周りでシステムを作ると、更新ごとに動作確認をしなければならない。RPA(ソフトウエアロボットによる業務自動化)やチャットボット、人工知能(AI)で代替できないか。その上でITシステムの更新サイクルを加速しないと、新興国などに追い抜かれる危機感がある。人的資源の割り振りという面でも従来型のSIでは対応しきれない」

 ―技術の提供ではなく、顧客の業務を理解するドメインナレッジ(業務知識)でデジタル化を進めています。
 「間違いなく成果が出ている。事業の範囲が格段に広がった。今後は業務知識の属人性を少なくし、会社のナレッジにしていく必要がある。顧客の業務をシステムという名の部品の集合体で構成できれば、AIに置き換えられるかもしれない」

 ―日立グループとしてIoT(モノのインターネット)基盤「ルマーダ」を推進しています。
 「日立システムズは実務運用型の会社。現場業務のデジタル化をもう少し組織的にプラットフォーム化できると良い。極端な例だが今後システムがクラウドとAIのみで実現する時代が来ても、我々のドメインナレッジとAIに教え込む技術で顧客に価値を提供できる」

【記者の目】
 デジタル変革(DX)時代に合わせたIT事業全体の変化を指摘する。見据えるのは主力のSI事業を含めた業務構造の転換。事業が好調だからこそ、次の成長への準備を始める。ITを提供する側も利用する側も、デジタル化の波という外部環境に対応したものだけが勝ち残る。
(川口拓洋)

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日刊工業新聞2019年9月11日

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