おいしい・安心・安全―「防災食」が進化している
食でストレス軽減も
■緊急時“無料”
飲料メーカーの防災関連商品は、2リットルペットボトルのミネラルウオーターが主力。いざという時にないと困るのが“飲料水”だ。サントリー食品インターナショナルは「緊急時飲料提供自動販売機」を、全国に約1万6000台設置している。平時は通常の自販機だが、緊急時はだれでも無料で飲料を取り出せる。また、東京都や静岡県、兵庫県、茨城県、岩手県、宮城県、広島県、四国各県の自治体などとの間で、サントリーフーズを介して災害協定を結んでいる。自治体から協力要請があれば、直ちに対応できる。95年の阪神・淡路大震災ではミネラルウオーターの2リットルペットボトル15万本、04年の新潟中越地震では2万5000本、11年の東日本大震災では500ミリリットルボトルと合わせ、約150万本を提供した。
■定期更新、目安提示
キリンビバレッジはアルカリイオン水のサイト「スマートストック」を11年から展開。貯蔵している飲料は定期更新が必要なだけに、何を、どれだけ、どんなサイクルでストックするのかをわかりやすく示した。買い忘れ防止や、長期間、保存しすぎて捨ててしまう事態が防げそうだ。
製品開発・販路開拓−高知県が支援
高知県は南海トラフ地震の発生時、海岸部で最大34・4メートルの津波が想定されている。県は官民一体で防災対策に取り組む中、防災食などの製品開発や販路開拓の支援にも乗り出している。
県は防災関連製品を半年に1度ずつ登録認定する。現在約80製品以上を冊子に掲載し、東京や大阪、名古屋などの主要都市圏の自治体や企業、防災製品を扱う商社に売り込み、各製品ごとの専任コーディネーターが販路開拓を支援する。
防災関連製品の製品化の助言や資金援助も実施。認定企業のアミノエース(高知市)は高知でなじみの菓子「ミレービスケット」を5年間保存用に改良して発売。黒潮町の第三セクター、黒潮町缶詰製作所は町産食材のゆずや魚の食材を使って毎日おいしく食べられる非常食のアレルゲン対応グルメ缶詰を商品化し、高知産の防災食を県外にアピールしている。
(文=大阪・香西貴之、編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2015年09月02日深層断面