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ブラジル旅行代理店の倒産、誠心誠意の対応で老舗らしい幕引き

ウニベルツール、消費者トラブルなく
 ウニベルツールは、ブラジルの旅行会社で経験のある代表によって1971年に設立された。ブラジル・中南米専門の老舗旅行代理店として一定の知名度を有し、個人旅行のほか、法人向けの現地発着ツアー・イベントを扱い、大手メーカーや大手商社などの海外出張・海外視察に関する航空券などの渡航手配やビザ申請代行も手がけていた。

 ブラジル・サンパウロや、リオデジャネイロの海外支店直営手配センターを拠点として、現地のランドオペレーターとの緊密な業務提携により、安心・安全のネットワークを築き、南米専門の旅行業者としての実績から業界内でも高い信用を得ていた。

 14年にブラジルで開催されたサッカーワールドカップの効果もあり、中南米方面への渡航が好調だった15年4月期には年売上高約20億円をあげていた。

 16年のリオデジャネイロ五輪の開催も追い風に、最近では「コパ・アメリカ2019」の現地発着ツアーの販売も手がけていた。

 だが、同業他社との競合が激化するなど取り巻く環境は厳しさを増し、現地の政治経済の不安定化を受けて販売が減少。加えて、今年6月の制度改正によってブラジルにおけるビザ免除措置がなされ、収入の柱の一つであったビザ申請手数料が見込めず、業況改善のめどが立たなくなり、ここにきて事業継続を断念。7月31日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 米中貿易戦争や日韓対立、香港デモ、欧州連合(EU)離脱問題、米国をはじめとする各国の金利利下げなど海外情勢は混沌(こんとん)としている。

 各国の政治経済の問題が際立つ昨今において、ニッチなマーケットに特化した勝負はリスクを伴うことを忘れてはならない。これまで業界のパイオニアかつプロフェッショナルとして、全社一丸となり、業績維持に努めてきた。

 「一般顧客へは説明を行い、順次ツアー・航空券など振り替え、消費者トラブルはない」と、最後まで誠心誠意の対応を見せた老舗業者らしい幕引きだった。
(文=帝国データバンク情報部)
(株)ウニベルツール
住所:東京都中央区銀座8―14―14
代表:渡辺淳二氏
資本金:4500万円
年売上高:約20億円(15年4月期)
負債:約9100万円
日刊工業新聞2019年9月10日

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