おいしい・安心・安全―「防災食」が進化している

食でストレス軽減も

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防災食の常設販売コーナーがあるホームセンター・コーナン精華台店(京都府精華町)
**食糧備蓄の意識定着
 2011年の東日本大震災を機に拡大した防災食市場。その後も国内各地で豪雨などの災害が発生し、食料備蓄への意識は定着しつつある。防災食を提供するメーカーも、これまでの災害時に実際に食べた人の声を反映し、必要最低限からおいしさを工夫した商品へと進化させている。また普段の飲食物を使ってムダのない備えも提案する。

■新製品投入相次ぐ
 災害を経験した人が痛感するのは不安や不便な環境から生じるストレス。食はストレスの増減にかかわる大事な要素だ。防災食がストレス解消にもつながることから、食品各社は相次ぎ防災食の新製品を開発している。
 アルファフーズ(東京都港区)は味にこだわり見た目にもおいしい防災食を発売、温めても常温でもおいしく食べる工夫を施している。東京高木珈琲(東京都世田谷区)は防災用本格コーヒーを発売。独自製法で焙煎(ばいせん)後すぐに真空パックし長期保存を可能にした。カゴメは災害時に不足しがちの野菜摂取のため賞味期間5年半の野菜ジュースを開発した。
 防災用に長期保存できるビスコ保存缶を累計900万個以上販売する江崎グリコは、本格レトルトカレー「カレー職人」シリーズの防災食用を開発。温めずにおいしく食べられ長期保存可能な中身に改良し発売するほか、水の供給が不十分な場所でも口内ケアができるガム「ポスカ」の備蓄を推奨する。
 
■風味3年保つパン
 一方、パン・アキモト(栃木県那須塩原市)は阪神・淡路大震災を機に風味そのままで3年保存のパンの缶詰を発売。5年保存を売りにする他社も現れる中、安全・安心に加え、おいしさの重要性を訴える。
 今週は「防災週間」。防災食の備蓄があるから安心と思わず、賞味期限を確認。比較的古くなった備蓄食料をムダなく食べ、新しいおいしい防災食に入れ替え、防災用品の点検に充てるのも一案だ。
 
■ムダなく備え/ストック量一定に保つ
 防災食は備蓄保存して利用するだけでなく通常の食品をうまく活用することも可能だ。「東日本大震災で帰宅困難になった時、オフィスに常備された菓子が緊急用食料として役立った」。江崎グリコが提供する菓子類が入った常備ボックス「オフィスグリコ」を設置する企業の関係者は話す。
 「オフィスグリコ」は2002年に江崎グリコがオフィス向けに事業を開始。自社の菓子やアイスクリームだけでなく、他社製品も扱う置き菓子サービスとして主要都市圏を中心に累計12万台以上を設置している。東日本大震災以降、普段は空腹解消やリフレッシュを目的に食べる菓子類が緊急時は防災食にもなるとして注目され始めた。
 江崎グリコの古藪啓介オフィスグリコ推進部長は「省スペースで職場のそばにあり、常に訪問スタッフによって賞味期限が管理されていることが事業継続計画(BCP)対策としても受け入れられている」と強調する。
 
■期限切れ防ぐ
 一方、一般家庭に向け食品メーカー各社は備蓄食の期限切れを防ぐローリングストックを推奨する。日清食品は袋めん(賞味期限8カ月)、カップめん(同6カ月)を使い切れる量を目安に購入し、賞味期限の順に食べることを提案。非常用にストック量を一定に保てばムダのない備えができると防災イベントなどで訴えている。
 定期更新をテーマにした新商品では、アサヒグループホールディングスの子会社、天野実業(広島県福山市)がウェブ限定で8月31日に発売した「食べながら備えるローリングストックBOX」がある。看板商品のフリーズドライ食品で朝昼夕の3食セットを3日分ずつそろえ、日常消費で使った分を補充しやすい。
 フリーズドライはレトルト食品と違って電気ポットで沸かした少量の熱湯でも対応でき、ビタミンCをはじめとする栄養分も損なわれにくい。東日本大震災をきっかけに長所が見直されたとし、親子丼や炙(あぶ)りカニぞうすい、クリームシチューなど幅広く取りそろえている。

日刊工業新聞2015年09月02日深層断面

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