カフェのような献血ルーム、「クロスオーバーデザイン」の可能性

これまでとは違う形でフィジカルなコミュニケーションを求める

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千葉県赤十字献血センター「津田沼献血ルーム」。学校帰りに立ち寄る学生も増えた
 現代は、一人ひとりの異なる価値観を互いに尊重し、受容し合う多様化社会と言われている。この社会の変化を受けて、空間デザインも従来と変わり、ヒト・モノ・コトをどのように融合させ、デザインに落とし込むかが鍵となる。

 異なるモノやコトを融合させ、新たな価値を生み出すデザインの手法を、私は「クロスオーバーデザイン」と名づけた。調べてみると、国内外にクロスオーバーデザインを用いた興味深い事例があった。

 日本の事例に日本赤十字社献血ルームの空間デザインがある。課題は、若い世代の来訪を増やすことだった。人々が献血ルームに持つイメージを一新するために、カフェのような空間とサービスを提案したところ、利用者の年齢に変化が表れ、若い世代の利用が増えたそうだ。

 献血という行為は何ら変わらず、その場所で行われるのだが、カフェの風景を用いることによって献血前の緊張感を和らげたのだ。まさにデザインのチカラによって、価値を変え、新たな可能性を生み出した事例だ。

 海外にはさらにダイナミックなものがある。橋梁に公園の機能をかけ合わせ、渡るだけではなく、人々のくつろぎや出会いをも創出したクロスオーバーデザインの事例や、マンションの建物の内側に大規模なマルシェを作り、ここの住まいが市場を抱き込んだような形の空間デザインだ。

 人々の価値観が大きく変化し、私たちを取り巻く環境も変化している。デジタルデバイスの発達は、インターネットや参加交流型サイト(SNS)発信型の時代へと急速に移行させた。

 これに伴い時代や人々が求めるものも大きく変化している。場所や時間という制約から解き放たれた一方で、若い世代を中心にこれまでとは違う形でフィジカルなコミュニケーションを求めるようにもなっている。

 このことは、これまでに空間が持っていた役割を大きく変化させた。異なるモノやコトと、過去と未来という時間軸や情緒性をクロスオーバーさせたデザインはこれからさらに増えてくるだろう。

 このような変化を意識して見てみると、昨日まで目にしていたデザインが違うものに見えてくるかもしれない。
(文=見月伸一・三井デザインテック・デザインマネジメント部長)

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