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GEのイメルト会長が日本の名経営者たちと語り合った製造業の大変革

IHI・斎藤、コマツ・大橋、富士フイルム・古森。彼らの覚悟とこれからの指針
GEのイメルト会長が日本の名経営者たちと語り合った製造業の大変革

IHIの斎藤社長(左上)、GEのイメルト会長(右上)、コマツの大橋社長(左下)、富士フイルムの古森会長(右下)


 指針-3:顧客起点で考え、ビジネスプロセスを遡って変革することが必要。すべては顧客の利益のためである
 「データを活用する目的は、顧客企業の生産性向上に貢献することだ」とGE のイメルト会長。「テクノロジーはそれを達成するための手段であり、最終的な目的はお客さまの成果を高めることにある」という。

 顧客起点で考えて製造開発など初期プロセスから正しく修正していく、そういう姿勢が、これからのメーカーのあり方だと言える。コマツの大橋社長は「設計図面の不備に起因する工事のやり直しが、工事費を3割押し上げているという現実がある。ドローンを飛ばして精密測量をすれば、元の設計図が間違っていることがわかる。バックワードで考えなくてはだめだ」と話す。

 指針-4:時間をかけて100%を目指すよりも、いち早く上市し修正を重ねる方が、結果的に顧客の利益にかなう
 「シーズもニーズも多様化しているし、変化も激しい。こうだと決めつけて商品化すると往々にして間違う。製品が市場に導入される頃には、もうニーズとずれている」と富士フイルムの古森会長。こういった状況は、製造業に携わる多くの人々の実感だろう。

 GEではFastWorksという考え方を導入、“シリコンバレーのスタートアップ企業流”のやり方を重工業のGEに当てはめようとしている。これは、まずMVPs: Minimum Viable Products(実現可能な最小限の製品)をつくり、顧客の声を反映しながら修正していく。開発スピードを高め、より顧客のニーズに合った製品づくりを行おうというもの。

 イメルト会長「大事なことは、可能な限り素早く上市し、失敗するならなるべく早く失敗し、機敏に方向転換することだ」という。

 指針-5:自前主義に陥らずオープン・イノベーションで社外の力を活用し、スピードを追求することが必要
 インダストリアル・インターネットの時代には、すべての製造業は、ソフトウェアとアナリティクス(分析)の機能を備える必要がある。商品ライフサイクルの短期化と顧客ニーズの多様化にも対応しなくてはいけない。これらをすべて自分たちのリソースだけで行うのは、ますます困難になっている。そこで、外部の力を活かしたオープン・イノベーションに取り組む企業が増えている。

 IHIの斎藤社長は「オープン・イノベーションは、自分たちを変えていくツールだと考えている」と話す。IHIは昨年10月に「IHIつなぐラボ」を横浜に開設。IHIとパートナー、顧客が共創する場をつくった。『Realize your dreams』をキャッチフレーズに、顧客自身も気がついていないものを実現しようと取り組んでいる。

 コマツの大橋社長も「誰かと一緒にやらないと、自分たちだけではスピードに追いついていけない。技術がもれるという心配はあっても、オープン・イノベーションに取り組むべきだ」と指摘した。

未来の産業を日本と創造する


 GEのイメルト会長は、製造業の大転換期を迎えている今こそ、世界における日本の重要度は増しており 共に未来を切り開くパートナーだと考えている。「GEにとっても世界にとっても、日本は大切な国。優れた人材、企業がある。才能あふれる人、技術の素晴らしさ、これらを持つ日本は、インダストリアル・インターネットの時代においても、素晴らしい仕事ができる」としたうえで、「我々企業は、企業文化もビジネスも、刷新していかなければならない」と語り、リーン生産方式やQCなどを生んだ日本にはそれが十分可能だ、とパネルディスカッションを締めくくった。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
航空エンジン部品にいち早く3Dプリンターを導入したGE。「FastWorks」は米国が製造プロセスのイノベーションをリードし始めた象徴といえる。旧態依然とした組織やガバナンスのままでは日本の製造業は取り残される。上記の3社の経営者は少なくとも強い危機感を持っているはずだ。

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