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オフィスビルの「二次空室」、次のテナントは内装自由に

森トラストが試行
オフィスビルの「二次空室」、次のテナントは内装自由に

理想のオフィスづくりを後押しし、既存ビルの付加価値を向上する(虎ノ門2丁目タワー)

 森トラストはテナントの退去に伴い発生するオフィスビルの2次空室に対し、次のテナントが専用部の内装を自由に仕上げることができる仕組みの導入を検討する。標準の床材や天井材を施工せずに引き渡し、テナントが理想とする“働きやすいオフィス”を実現しやすくする。本社を置く「虎ノ門2丁目タワー」(東京都港区)で近く大型空室が生じるのに合わせて試行し、ニーズを見極める。

 2次空室は床材や天井材を施工して引き渡すのが一般的。森トラストは開発中の「東京ワールドゲート」で、天井材などを設けずこだわりを反映できるようにした仕組みを訴求している。これが好評なため、既存ビルの競争力を高める施策として展開を決めた。引き渡し時には天井の4分の1をスケルトン、残りをシステム天井としたり、床全体をOAフロア仕上げとしたりすることを想定する。

 これにより、テナントは天井のスケルトン化や床材選択などの自由度が拡大。システム天井を撤去して構造物がむき出しのスケルトン仕様にしたり、標準のタイルカーペットを張り替えたりする手間やコストも省ける。原状回復コストを低減する効果も見込む。また「五感に訴える」(同社)仕掛けも追求。受付や共用部に向け、十分な休息や自由な発想を促すBGMや香りの制作を検討する。

 働き方改革の浸透を追い風に、足元ではオフィスを戦略的に作る企業が急増。一般的な会議室の印象を覆すコミュニケーションスペースやラウンジが完成する中で、内装に磨きをかけるニーズが高まっている。最近は「トラディショナルな外観とクリエーティブな内装のギャップを好むのがトレンド」(同)としており、虎ノ門2丁目タワーでもすでに空室への引き合いが寄せられているという。

 虎ノ門2丁目タワーは99年7月に完成した地下4階・地上21階建て。基準階面積は981・40平方メートル、基準階天井高は2700ミリメートルで、低層部に森トラストが本社を構える。10―12月に高層部の10フロア約3000坪(1坪は約3・3平方メートル)が空室となる予定。東京メトロ銀座線「虎ノ門駅」から徒歩4分、同日比谷線の「神谷町駅」から徒歩8分と交通利便性に優れる。
日刊工業新聞2019年8月12日

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