中国・深圳で開催中のロボコンに見る、ロボットを身近にするエンタメ力

DJIが主催、「RoboMaster」現地レポート(2)

 中国・深圳で開かれ、世界の大学生らが参加するロボットコンテスト「RoboMaster」のベスト4が出そろった。いずれも中国の東北大学と電子科技大学、大連交通大学、上海交通大学が4強として11日の準決勝に進む。大学生の製作物とは思えない完成度の高さのロボットたちだ。準決勝と決勝の様子は日本でも生中継される。(取材・小寺貴之)

eスポーツを具現化


 RoboMasterはタワーディフェンス系のeスポーツを実際にロボットで具現化したようなコンテストだ。歩兵ロボや工兵ロボ、空中ロボなど5種類7台のロボを操縦して、相手の基地のHPを削り合う。実機でありながら、スマホゲームと遜色ないスピードで、激しい撃ち合いが繰り広げられる。ベスト4に残ったチームは5種類すべての機体のレベルが高い。加えて、ロボットの操縦者が徹底して練習してきている。約1年間かけて機体開発と操縦訓練の双方を仕上げている。

 まずベスト4を決めたのは東北大学と大連交通大学だった。東北大学は北京理工大学、大連交通大学は電子科技大学を下して早々に準決勝進出を決めた。東北大学は数々のチームを速攻で沈めてきた。強みの一つが射撃精度の高さだ。操縦者リーダーの王法祺(正しくはネに其)大学院生は「毎晩遅くまで練習してきた。優勝に向けてチームが一つになれたからここまでこれた」と振り返る。

ゲームのようなギミック


 RoboMasterにはゲームのように攻撃力アップやスタンなどのエフェクトがかかるギミックが用意されている。例えば機体をぶつけて相手を壊しにいく行為を防ぐために、激しく衝突するとスタンと判定されて一定時間操縦画面が真っ黒になる。ぶつけにいったチーム全員をブラックアウトさせて、乱暴な破壊行為を防いでいる。

 また、フィールド中央には回転する桜の花のようなギミックが用意されている。花びらの先端を順番に5枚撃ち抜くとチーム全員の攻撃力が2倍になる。18年大会では止まった対象を採用していたが、19年大会は動く的を狙うように難度が上がっている。射撃精度はこのエフェクトを発動させるために必須だ。王法祺大学院生は「練習のために、大学に回転花を作った。大学の支援のおかげで大会に向け集中できた」と説明する。

 大連交通大学は攻撃力アップを上手く使い電子科技大学を下した。まず回転花を射貫き、攻撃力を高めた上で波状攻撃を仕掛ける。相手の機体を倒して、無防備になった基地に集中砲火を浴びせた。

東北大学の反省会 4位決定戦で勝った試合の後もプログラムを再調整

 電子科技大学と上海交通大学は敗者復活でベスト4に滑り込んだ。RoboMasterではトーナメントでベスト8やベスト4に上がるたびに半数が勝ち抜け、もう半数は敗者復活として何度も戦うことになる。電子科技大学は試合が始まると、まず相手陣深くに歩兵ロボを送り込んで攪乱する作戦をとった。本来、開始直後は弾丸の確保などで忙しい。体制を整えている相手を攻めて妨害する。

 4位決定戦のハルビン工業大学との試合では3ラウンド中、第1ラウンドは攪乱が効いた。だが第2ラウンドでは攪乱部隊が返り討ちに遭って負けた。第3ラウンドにいたっては攪乱部隊のロボが転倒してしまった。この乱れのせいで何台も倒されたが、時間を稼いで回復し、体制を整える。結局、単機が基地に特攻して基地を叩き、ハルビン工業大学を下した。この操縦者は試合のMVPに選ばれた。

 最後に4位枠を決めたのが上海交通大学だ。北京理工大学と相手の基地をロボで囲んで削り合う勝負になった。攻撃力アップのエフェクトが効き、削り合いに勝利した。

 RoboMasterではゲームの要素を盛り込み、エンターテイメント性を高めている。攻撃力の上昇率やペナルティの時間を調整することで試合を健全な方向に誘導し、特定のロボットだけが強力になりすぎないよう工夫されている。特定の勝ちパターンができてしまうと、大会を通して同じような展開の試合が続く課題があった。ゲームのように調整すると、試合が接戦になり競技として面白くなる。技術に興味のない層もゲーム性で大会に惹きつけ、ロボットをより身近なものにする。

DJI社内のロボマスの新ルール検証用フィールド

DJIが主催・ロボコン「RoboMaster」現地レポート


【01】歩兵ロボやドローンで戦う、中国・深圳で開催中のロボコンに学ぶべきコト(2019年8月10日配信)
【02】中国・深圳で開催中のロボコンに見る、ロボットを身近にするエンタメ力(8月11日配信)

ニュースイッチオリジナル

小寺 貴之

小寺 貴之
08月11日
この記事のファシリテーター

ARのエフェクトを初めて見たときは「ロボコンなのにずるくないか」と思ってしまいました。ですが「ロボコンなのに」って何なんだ、と考えると、RoboMasterが正解だと思います。人間がするスポーツもウエアにマーカーなどを仕込んでARで演出したらもっと面白くなると思います。ラグビーやホッケーなど、玄人好みのスポーツとARエフェクトは相性が良いはずです。速く広く球が動くと普通の人の動体視力では球を追えなかったりします。ルールを知らない人でもスポーツを楽しめるようにするには、ルールや状況の説明よりも直感的にわかるエフェクトや演出であるべきだと思います。ルールを勉強してから見に来い、といっているスポーツはファンが増えません。ロボットのコンテストもスポーツも素人受けを最優先に考えてテクノロジーを導入すると、普及への制約を外せると思います。

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