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地域密着と利便性、初の「ネット銀行」は地銀のカンフル剤になるか

ふくおかFGが2020年度めどに
地域密着と利便性、初の「ネット銀行」は地銀のカンフル剤になるか

ふくおかFGの本社ビル

 ふくおかフィナンシャルグループ(FG)は7日、2020年度をめどにインターネット専業の新銀行を設立すると発表した。準備会社「みんなの銀行設立準備」(福岡市中央区)を全額出資で8月中旬に開設する。デジタル技術の進展に伴う顧客の行動変化や社会構造の変容に対応するため「デジタルネイティブバンク」を掲げ、幼いころからデジタル技術に親しんでいる世代の取り込みを図る。

 地方銀行によるネット銀行の設立は初となる。ふくおかFGは、対面で手続きに手間がかかることや画一的な商品など、従来型の銀行サービスと新銀行のユーザーと見込む層のニーズにギャップがあると分析。デジタル化でギャップを埋める。

 システム開発は5月設立の子会社、ゼロバンク・デザインファクトリー(同)が手がける。同社社長の横田浩二氏が準備会社の社長にも就く予定。資本金は準備金含め8億円。

 新銀行はコミュニティーを重視する若年層のニーズもサービスに反映する。具体的なサービス内容やスケジュールなどの詳細は今後詰める。

 長引く低金利により、銀行の利ざやは縮小しているのに加え、IT企業や流通など異業種からの参入で競争が激化する中、地銀の地域密着性とネットによる利便性の両面を打ち出し、顧客獲得を図る。

日刊工業新聞2019年8月8日



苦境の地銀業績一覧


 全国地方銀行協会(地銀協)が22日まとめた地銀63行の2019年3月期決算は45行が経常減益だった。地銀協の柴戸隆成会長(福岡銀行会長兼頭取)は同日の定例会見で「今の金利状況を考えると、増益にすることは難しい。米中貿易問題で先行きにも不透明感がある」とし、経営環境の厳しさを説明した。

 日銀のマイナス金利政策で預貸金の利ざやが縮小。加えて地方は人口減と少子高齢化が進む構造問題を抱える。異業種の金融事業参入も大きな痛手となっている。今後も日銀は金融緩和を続ける見通しで、手数料ビジネスやコンサルティング事業の強化、店舗統廃合による経費削減など構造改革が求められる。

収益構造改革が急務


 地方銀行の苦境が依然として続いている。地銀20行・グループの2019年3月期の当期利益は、12行・グループが減益となった。日銀のマイナス金利政策の影響で、預貸業務の利ざやの縮小を余儀なくされていることが一因だ。20年3月期は13行・グループが当期減益を見込む。日銀は少なくとも、20年春ごろまでは超低金利を維持する方針。各行・グループは手数料ビジネスの強化など、収益構造改革を今まで以上に進める必要がある。

 全国地方銀行協会が22日に開いた会見で、柴戸隆成会長(福岡銀行会長兼頭取)は「18年度は引き続き超低金利状態で、収益への下押し圧力がかかる環境だった」と回顧した。経費については若干の減少がみられるとし、「各行の働き方改革や生産性向上の成果が表れている」と語った。

 預貸業務の利ざやがいつどの程度改善するか見通しにくい中、保険商品や投資信託の販売といった手数料ビジネスや、法人向けのM&A(合併・買収)仲介などに力を注ぐ事例も目立ってきた。「後継者問題や成長戦略でM&Aに対するニーズはかなり強い」(柴戸地銀協会長)。各行・グループは成長分野に経営資源を重点配分し、収益源の多角化などが求められている。

東日本 システム投資、負担響く


 東日本の主要地銀9行・グループの20年3月期業績予想は、コンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)や千葉銀行など4行・グループが当期増益を見込む一方、長引く超低金利と業務効率改善を目指したシステム投資が重くのしかかる。

 埼玉りそな銀行は、19年3月期に保有有価証券の売却で財務体質を健全化したことが奏功する見込みだ。「法人ソリューション、個人向け資産形成サポートに注力する」(池田一義社長)と手数料収入および貸し出しを強化する。

 コンコルディアFGは、経営基盤強化に向けたシステム投資の経費がかさむ。「デジタル技術で業務を3割削減し、3分の1の店舗の統合や軽量化を進める」(川村健一社長)。

 千葉銀行は、システム改善費用などで実質業務純益は減少するものの、法人営業の強化で当期増益は確保する。東京きらぼしフィナンシャルグループは、店舗再配置・スリム化、本部効率化などの効果を見込む。

 めぶきフィナンシャルグループは「システムを一本化し事務処理体制の大幅な合理化を実現」(笹島律夫社長)するため、基幹システム共通化への負担が増加。群馬銀行と北洋銀行はマイナス金利が続くことによる利息収入の減少が響く。七十七銀行は「コンサル営業で手数料収入に結びつける」(小林英文頭取)とし、グループ一体で総合収益につなげる考えだ。

中部 業績予想、まだら模様


 中部の主要地銀の20年3月期業績予想はまだら模様だ。

 静岡銀行は高い利回りが見込める中小企業や個人向けの貸し出し、伸びているストラクチャードファイナンスなどに注力し、当期増益を予想。「地域密着金融や事業継承など、付加価値の高いサービスを提供していく」(柴田久頭取)と意欲を示す。

 十六銀行も中小企業向けの貸出金利は「反転の兆し」(村瀬幸雄頭取)。金利以外の収益源を増やしていく方針で、6月に証券子会社「十六TT証券」を開業する。

 一方、ほくほくFG傘下の北陸銀行は「収益環境は極めて厳しい」(庵栄伸頭取)と、当期減益予想。コンサルティング機能の強化を続けつつ、個人取引はデジタル化の機運に沿ったサービスの充実を図る。

関西・中四国 金利で稼ぐ本業の力低下


 関西と中四国の主要地銀6行・グループは20年3月期に軒並み当期減益を予想する。貸出金の利回り低下に歯止めがかからず有価証券の運用環境も悪化。手数料ビジネスやコスト削減に努めても本業の金利で稼ぐ力の低下を補えない。

 りそなグループの信託事業を取り込み事業承継や不動産活用サービスに活路を求めるのは関西みらいフィナンシャルグループ。「グループの力を共有し厳しい決算をはね返す」(菅哲哉社長)。

 広島銀行は19年3月期に貸出金利息の収益を前期比で伸ばした。だが部谷俊雄頭取は「非金利収益を拡大し安定的な収益構造を確立したい」と地銀事業の変革を図る。中国銀行の宮長雅人頭取は「本業の融資に関連したコンサルタント業務や人材あっせん業で手数料ビジネスを拡大する」ともくろむ。

 伊予銀行の大塚岩男頭取も「取引先としっかり関係を築き、さまざまな形で利用してもらうビジネスモデルを作り上げる」とする。

 特に苦しいのは低金利競争が厳しい関西。池田泉州ホールディングスは重荷だった外国債券の含み損を株式含み益で処理したが、経営の立て直しは途上。鵜川淳社長は25年に大阪市で開かれる国際博覧会「大阪・関西万博」を「大阪を地盤とする当行が地域貢献する好機」ととらえる。顧客の課題解決サービスに知恵を絞り存在価値を訴求する。

九州 手数料収入、着実に伸長


 ふくおかフィナンシャルグループ(FG)の2020年3月期は、4月に経営統合した十八銀行の負ののれん発生益の計上により、過去最高の当期利益を見込む。M&A(合併・買収)仲介などによる手数料収入は「急激に伸ばせないが着実に増やす」(柴戸隆成社長)。

 西日本フィナンシャルホールディングス(FH)は20年3月期、厳しい経営環境が響いて減収が見込まれる。当期利益も減らすが「かなり固め」(谷川浩道社長)の予想。「金利の1ベーシスポイント(0・01%)にこだわる」営業姿勢で融資利率を安易に下げずに利益を積み上げる。

 両社ともに19年3月期当期利益は、信用コストが膨らむ中で増益を確保。ふくおかFGは傘下の福岡銀行のコア業務純益の伸びが貢献。西日本FHは徹底した経費削減などでカバーした。

                

日刊工業新聞2019年5月23日

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