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IoTによる「データ洪水」目前。求む!データ・サイエンティスト

GEはすでに産業機器に設置された1,000万個のセンサーを分析

当面の解決策はチームで業務を分担するか、クラウドソーシングの活用か


 諸外国では官民を問わず、様々な機関でデータ・サイエンティスト育成のための手段が講じられています。EUでは、デジタル職種のための大連立を導入、若い人たちに技術系職種に興味を持ってもらうと同時にすでに就労している人材のスキルアップを図るべく、各種関連業界や学校との協力を始めています。

 シンガポールも、データ分析のノウハウを政府と各業界に蓄積するための取り組みを推進中。昨年2月、米オバマ政権はシリコンバレーの著名人であるD. J.パティル氏をデータ・ポリシーの最高技術副責任者兼チーフ・データサイエンティストに任命しました。

 日本でも、総務省統計局及び統計研修所が日本統計学会等と協力し、統計力向上サイト「データサイエンス・スクール」を統計局ホームページに開設したほか、MOOCの手法を用いた「データサイエンス・オンライン講座」を開設。大学や企業内においても、様々なデータ・サイエンティスト育成への取り組みがスタートしています。

 しかし、政府も企業も、まずは今現在のニーズに応えなくてはなりません。その答えの一つが、アクセンチュア社によって進められているチーム・アプローチです。つまり、データ・サイエンティストに求められる職務を、チーム内で分割して担当しようというもの。

 何度の高いデータ処理は5年以内に全体の4分の1を占める

 Accenture Institute for High Performanceのシニアリサーチ・フェロー、アラン・アルター氏は「データ・サイエンティストとは、データ・エンジニア、科学者、管理者、教師のすべての素質を併せ持った人。その人物の仕事を、要素ごとに分割して、チームで業務をこなせばいい」と指摘します。

 これに対し、クラウドソーシングの活用を提案するのはマサチューセッツ工科大学スローン・マネジメント・スクールのリサーチ・フェロー、マイケル・シュラージ氏。たとえば、クラウド・ソリューションやブロードバンド・インターネットの活用で、企業は膨大なデータをコスト効率よく転送し、リモートで分析することが可能になります。

 ここでは”自動化”も重要な要素です。シュラージ氏は、現在の複雑なデータ分析業務の半分は、5年以内にそれほど専門性の高くない作業者でもソフトウェアの助けを借りて処理できるようになるはず、と期待しています。「データ処理の世界では、難度でみたときに現在上位2%に位置する類の業務が、5年も経たないうちに全体の4分の1を占めるようになるでしょう」と同氏は言います。

 ただ、ツールやアウトソーシング、トレーニングが整っても、すべての企業に成功が保証されるわけではありません。例えるなら、医療が行き渡っているからといって「やぶ医者による誤診がなくなるわけではない」のと同じ。自動化ツールにしても、原理原則を理解せずに使えば、大きな誤用を招く可能性があります。

 本格的なビッグデータ時代を迎える今、いかにしてデータ・サイエンティストを育成し、確保するか。これを怠れば、“時代の変革という波“に乗り損ねかねません。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
IoTのアプリケーションはまだはっきりしてない。ただ2018年には全世界で80億台のIoTデバイスが登場するという予測があり、急速に物がインターネットにつながっていくことで、さまざまな産業に大きな影響を与える。そして社内のデータも「ビッグデータ」になっていく。まずはデータ・サイエンティストと仰々しく構えなくても、社内のリレーショナルデータベースの上に蓄積されているデータの統計処理をエクセルで始めることからかもしれない。

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