来年度、国は何にお金を使う?(2)国交省、文科省
気になる使い道は
文科省は総額9・8%増
文部科学省は25日、16年度予算の概算要求案を自民党の文部科学部会に示し、おおむね了承された。一般会計は前年度比9・8%増の5兆8552億円。うち科学技術予算は同18・2%増の1兆1445億円となった。
研究・教育の基盤を担う国立大学の運営費交付金は3・8%増の1兆1365億円。増額の大半は新設の「三つの重点支援の枠組み」向けだ。各大学選択の「地域」「特定分野」「世界トップクラス」に応じて支援する。
科学技術では人工知能を中心にモノのインターネット(IoT)など4分野の基盤技術開発で100億円。企業とのマッチング方式で高度マネジメントを行う大型産学共同研究で30億円。優れた若手研究者の挑戦意識と雇用安定性を両立する「卓越研究員制度」で15億円を盛り込む。
◆月面探査機「SLIM」に41億円
文部科学省は日本初の月面着陸機である「SLIM(スリム)」の開発費として、2016年度予算の概算要求に、41億円を盛り込む方針を固めた。スリム搭載の小型固体燃料ロケット「イプシロン」を月に向けて打ち上げる際の推進力向上や、月面の位置を正確に認識し、着陸する技術の開発などを行う。スリムは18年度にも打ち上げる計画。このほかオール電化などの次世代技術試験衛星の開発に5億円、超高域での高精度観測が可能な先進レーダー衛星開発に14億円を盛り込む。
◆人工知能などに10年で100億円
文部科学省は人工知能(AI)を中核として、大量データ(ビッグデータ)、モノのインターネット(IoT)、サイバーセキュリティーの4分野の共通基盤になるプラットフォーム技術の開発を2016年度から始める。
この技術を、10年後のモノづくりや医療、都市政策などに幅広く応用していく。理化学研究所を拠点に大学、国立情報学研究所などからトップクラスの研究者を集め、共同研究を企業と協力して実施する。10年間の事業で、まず16年度予算の概算要求に100億円を盛り込む。
4テーマは最先端の情報関連技術として関係している。例えば、製造業で注目のIoTでは、多数のセンサーで収集したビッグデータを、どのような観点で解析するかをAIで判断する期待があり、これらの仕組み構築ではセキュリティーの確保が欠かせない。企業や既存プロジェクトによるテーマ別研究に対し、新事業は、4テーマの基盤になるプラットフォーム技術を開発。さらにモノづくりや医療、都市政策など応用分野のアイデアと融合を図る。産業界や人文社会科学の研究者も参画のうえ人材育成を推進。中長期的な日本の情報技術社会の豊かさ構築に臨む。
理研はスーパーコンピューター「京」で解析したビッグデータを、企業の材料や医薬品の開発につなげた経験が生かせそうだ。
日刊工業新聞2015年08月26日 総合1面に加筆