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対韓輸出管理を強化 半導体材料メーカーが拭えない「不安」

文大統領は孫氏と会談も、日韓関係は言及せず
対韓輸出管理を強化 半導体材料メーカーが拭えない「不安」

韓国の半導体生産に影響も(イメージ)

 フッ化水素など3品目の韓国向け輸出の管理が4日、強化された。包括許可制度の対象から外れ、契約案件ごとに輸出許可の申請、審査が必要となる。3日前、突然の発表を受け情報収集に追われた素材各社も今は粛々と対応している。ただ日本勢で寡占状態の品目を対象とするのは難しい日韓関係を表しており、今後の不安は拭えない。

 対象3品目のレジスト(感光材)、フッ化水素、フッ化ポリイミドは日本勢の寡占と超最先端デバイスに使われることが共通点だ。

 半導体の回路パターンを転写する工程に使うレジストは数種類あり、今回の対象は極端紫外線(EUV)光源と電子線(EB)露光に対応したもの。EUV露光は10ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の回路線幅を加工できる最先端技術で、量産は世界で始まったばかり。韓国サムスン電子は7ナノメートルと5ナノメートルのプロセス開発を完了し、EUV専用ラインでの生産開始は2020年と公表。本格量産は少し先のようだ。

 EUVレジストを商業化しているのはJSRと東京応化工業、信越化学工業のみ。JSRはベルギーで生産している。東京応化は日本と韓国に拠点を持つが「今のところ影響は限定的」という。

 フッ化水素も半導体の微細な回路を加工するエッチング工程で、不要な部分を溶解させる薬品として使われる。強い毒性を持つことが特徴だ。ステラケミファはエッチング用薬液(フッ化水素酸)のトップメーカーで、高純度のフッ化水素酸を製造し韓国に輸出している。「現時点で対応を検討中で、業績への影響も未定」とする。

 森田化学工業(大阪市中央区)はフッ化水素の原料を中国の合弁会社から輸入して国内で高純度の薬液に加工し、半導体製造用のウェットエッチング剤、洗浄剤原料として韓国にも輸出している。同社は「今後、輸出許可がいつ出るかわからず、基準も不明」として戸惑いを見せる。

 川崎事業所(川崎市川崎区)で製造する昭和電工は事業規模が小さく「業績影響は軽微」とみている。

 フッ化ポリイミドは機械的強度や耐熱性を持つポリイミドに、透明性や低誘電率を付与できることが論文で報告されている。フレキシブルディスプレー基板をはじめ、航空宇宙など多用途展開の期待が高い。

 輸出手続きに時間はかかるが、今回の措置だけで、韓国での半導体生産全体に直ちに影響するとは考えにくい。ただ、半導体の製造工程と材料の組み合わせは複雑だ。問題が長期化した場合、一つの材料の到着遅れが大幅な生産停滞につながらないとも限らない。韓国が国産化を目指すことも予想される。今後の日韓関係を冷静に見ていく必要がある。


文大統領が孫氏と会談、日韓関係の言及なし


 一方、韓国の文在寅大統領は4日、訪韓したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長と会談した。韓国の聯合ニュースによると、会談は予定の40分を大幅に超え、約90分間行われ、文大統領が若手起業家への支援やAI人材への支援を呼びかけたという。また、孫氏は「今後、韓国が集中すべきことは1にもAI、2にもAI、3にもAI」と持論を展開したという。
 注目された日韓関係への言及は双方ともなかったようだ。
日刊工業新聞2019年7月5日(化学・金属・繊維 )に加筆

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