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NTT初の女性取締役が語るロールモデルとは

NTT・岡敦子氏、「自分のロールモデルは自分」
NTT初の女性取締役が語るロールモデルとは

NTT取締役・岡敦子氏

 NTTに初の女性取締役が誕生した。研究分野に加え、映像配信サービスの立ち上げやIoT(モノのインターネット)関連など多彩な経験を積み、同社のロールモデルとなるであろう岡敦子取締役技術企画部門長に女性のキャリアアップについて聞いた。(インタビュー・大城蕗子)

―女性のキャリア形成におけるヒントは。
 「私の入社時は女性管理職がほとんどいなくて、自分のロールモデルは自分だと思っていた。ただ見方を変えると、一つのロールモデルではなく、つまみ食いをすれば良いことが分かった。周囲の人たちの良い部分を組み合わせて自分なりのロールモデルを作り、それを目標に設定すれば良い。私がつまみ食いされることだってきっとある。オープンカフェなど女性社員と対談できる場に積極的に参加して、お役に立ちたい」

―出産などのライフイベントで昇進を諦める女性もいます。
 「多様な人材がいる企業こそ強く、均一な組織だと倒れてしまうことが多い。働くうえで、ライフイベントなどの経験を生かせる場面があるはず。臆せず挑戦してほしい」

―管理者を目指す女性にアドバイスを。
 「自分の限界を自分で作らないこと。自分には可能性があり、皆に期待されていると思うことが大切だ。また『チャンスの神は前髪しかない』という言葉通り、目の前のチャンスを絶対に逃さないこと。挑戦してうまくいかなくても、それが評価のポイントではなく、どうリカバリーしたかを会社は見ているはずだ」

-これまでどういったチャンスに遭遇しましたか。
 「米マサチューセッツ工科大学への一年間の留学経験だ。NTTのビジネスを海外で展開するために、会社から『留学を考えてくれ』と言われた。ただ猶予は少なくて翌週月曜には答えを出さないといけなかった。私自身ずっと研究畑を歩んでいて、ビジネスの初歩的な部分が不足していた。NTTの技術がどんなに良くても、海外での商談相手にとってどんなメリットがあるのか、いくらかかるのかをしっかり伝えられないとビジネスにならない。こうしたことを学べると思い留学を決めた」

-留学での学びは。
 「それぞれ異なるバックグランドを持つ人と過ごすなかで、自分の意見を求められる場面が多かった。人と同じであることよりも、異なる価値観でもしっかり相手に伝えることが重要と知った」

-その後のキャリアにどういかされましたか。
 「留学後はNTTコミュニケーションズで10年ほど映像配信に携わり、その後別の事業会社で社長を務めるなど、いろんな経験を積み、異なる考えや意見を持つ人たちと仕事を進めてきた。自分にとって当たり前なことが他の人には当てはまらないことも多かったが、実はそこを相手に伝えることが重要という視点を持てた」

-今後のキャリアプランは。
 「人生100年の時代。働けるうちは働きたい。人工知能(AI)で変わる職業もあれば、新しく生まれる職業もあるだろう。いま私が見えている仕事よりも領域が広がるので、チャレンジできる領域を探したい」

記者の目/挑戦するチャンス、平等に


NTTは2020年度までに女性管理者比率を6%に高める目標を設定し、現在は5・7%。おおむね達成する見通し。岡氏が「チャンスを逃すな」と何度も繰り返す通り、挑戦する場は皆平等に与えられているかもしれない。

【略歴】
 岡敦子氏(おか・あつこ)88年(昭63)慶大院管理工学専攻修了、同年NTT入社。10年NTTナビスペース社長、17年NTTレゾナント取締役。55歳。

日刊工業新聞2019年7月3日(ICT)に加筆

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