“つながる車”加速、注目スタートアップが描く未来図

スマートドライブ・北川烈CEOインタビュー

 スマートドライブは、自動車が走行時に残すデータを処理・分析し、車両の動態管理や保険の割引制度などに活用できるプラットフォームを運用するスタートアップだ。シガーソケットに挿すだけで車をコネクテッド化する同社のデバイスは、営業車両の管理など法人利用を中心に出荷ベースで3万台を超えるなど、存在感を増している。2019年内にはタイに進出し、海外深耕も狙う。創業者の北川烈代表取締役最高経営責任者(CEO)に今後の戦略を聞いた。

スマートドライブの法人向け車両管理サービス「SmartDrive Fleet」:専用のデバイスで取得するGPSや加速度のデータのほか、必要に応じて天気などのオープンデータを活用し、車両の動態を可視化する。管理者はパソコンで走行データを確認できる。リアルタイムに車両位置や1日の走行距離・時間を把握したり、独自のアルゴリズムで安全運転を診断したりできる。

早期に10万台出荷へ


 ―デバイスは出荷台ベースで3万台を超えました。
 デバイスを使って単に車両の状況を可視化するだけでなく(そのデータを活用して)企業の移動にまつわる課題を解決するサービスとして提供できており、手応えを感じています。例えば稼働日数が少ない車を可視化し、それをカーシェアに置き換えて駐車場代を削減するといった提案をしています。また、地方の企業では社員が1日の営業をまわり終えた後に(業務を確実に遂行したかの確認のため)会社に戻って日報を書くというケースがありますが、車両の運行ルートの可視化により(業務の遂行を確認して)直行直帰を認めるようにするなど業務の効率化を後押ししています。

 ―直近の目標は。
 2020年中に10万台の出荷を達成したいです。我々の端末は誰にも作れないというものではありません。ただ、「移動」に特化したプラットフォーマーという前提で事業を進めており、その知見がたまってきています。集めたデータを活用する“幅”では競合がいない状況だと考えています。10万台もの車両のデータを持つ会社はほかにはないと思うので、早く実現したいです。

 ―その目標をどのように実現しますか。
 法人利用を増やす方法として、企業の課題を解決する機能の作り込みを重視しています。我々はまず車両の状況を可視化し、顧客ごとにデータ分析して課題解決の方法を示します。ただ、そうした課題と解決策が業界共通など横に展開できるものであれば、標準機能としてサービスに搭載します。直近は介護業界向けに最適な巡回ルートを提案する機能を追加しました。こうした機能を増やしていきます。一方で、個人向けの強化も課題です。

                     

 ―個人向けはどう強化しますか。
 個人向けのサービスは、高齢者の運転状況などをスマートフォンで確認できる「見守りサービス」を提供していますが、保険会社と連携して(個別の運転状況をもとに保険料を決める)テレマティクス保険用に展開するなど、BツーBツーCのモデルが中心です。今後は間の「B」としてディーラーやリース会社などを開拓していきます。

アジアこそ相性がよい


 ―長期ではどのような展望を持っていますか。
 今は自動車だけですが、バイクや建設機械、コンテナなど移動はするけれど、あまり管理ができていないもののデータを取得し、最適化したいと考えています。車のデータとしても車載カメラやタイヤの空気圧などのデータを取得できる体制を構築していきます。また、移動の問題は世界共通なのでサービスを日本に閉じている必要はありません。日本の足場を固めつつ、できるだけ早く海外に進出します。

 ―海外では年内にタイでの展開を予定していますね。
 交通事故や渋滞などは日本にももちろんありますが、むしろアジアは特に深刻だと考えています。我々のサービスはそうした地域の方がより適しています。まずは自動車の保有率が高く、一定の市場規模があるタイで展開し、その後は東南アジアを中心に他国に広げていきます。導入台数の1ー2割を海外が占める体制を作りたいです。

           

 ―そもそも起業した理由を教えてください。
 父が会社を経営していたこともあり、元々就職する意識はあまりありませんでした。よいテーマが見つかったら自分でやりたいと思っていました。また、大学時代に米国に1年留学し、壁の向こうを見渡せる技術など社会を変えていく種がたくさんあると感じました。同時にそうした技術が悪用されず、世の中で適切に利用されるように推進する役割の重要性を感じ、(起業して)その役割を担いたいと思っていました。

 ―なぜ「移動」をテーマに選んだのですか。
 (大学院時代は)移動体のデータ分析を専門に研究し、防犯カメラから人の動きを分析するといったことに取り組み、移動は課題が大きいと感じていました。自動車がインターネットにつながれば世の中の変化量も大きいと思いましたし、その領域を自分の取り組みで加速したり、よりよい変化を起こしたりできればと思い、選びました。

                     

略歴:慶應義塾大学商学部で金融工学を学び、見聞を広めるために米国ボストンに留学。エンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学。移動体や金融のビッグデータ解析に応用される物理学「流体力学」を専門とする研究室で学んだ。在学中の13年にスマートドライブを創業。30歳。

ニュースイッチオリジナル

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葭本隆太
デジタルメディア局
ニュースイッチ編集長

北川CEOは海外展開に強い意欲を示しています。「甲子園球児が国内のプロ野球だけを目指しているわけではないことと同じで、海外展開を目指すのは自然なこと」と話していたのが印象的でした。

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