JAXAの的川泰宣氏がイプシロンとH3の新時代をわかりやすく解説
おすすめ本の本文抜粋『今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい宇宙ロケットの本 第3版』(的川泰宣・著)
2003年10月1日、宇宙科学研究所と宇宙開発事業団および航空宇宙技術研究所の三機関が統合することにより、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が誕生しました。現在JAXAが衛星・探査機の打上げに使用しているのは、固体燃料ロケットのイプシロンと液体燃料ロケットのH-ⅡA、H-ⅡBです。
世界最高峰の固体燃料ロケット技術を継承することを目的として開発が始められたイプシロンは、M-Vはもちろん、H-ⅡAなどの既存のロケット技術を参考にしています。イプシロンの最大の特徴は、人工頭脳を最大限に活用し、組立・点検などの運用を効率化し、世界一コンパクトな打上げを目標に、打上げシステム全体を大胆に改革したことです。
創造性が要求される作業は人間でなければできません。決められた項目・スケジュールに沿った作業を行うのは、判断基準さえしっかり設定すれば人工頭脳の方が早いし確実です。
H-ⅡAロケットの後継としては、2020年にH3ロケットの試験機を打ち上げる予定です。開発の眼目は「使いやすさ」です。日本の宇宙活動は、天気予報からブラックホールまで、まさに私たちの生活のさまざまな側面に浸透しています。それらの日本の宇宙ミッションを、政府・民間を問わずH3によって大いに加速するとともに、デビュー以降の20年間を見据え、世界のさまざまな国からの要求に応えて、毎年六機程度を安定して打ち上げることをめざしています。
H3の開発は、柔軟性・高信頼性・低価格の3つの要素を目標としています。大型液体ロケットエンジン(LE-9)の開発など新しい技術に挑戦するとともに、固体ロケットブースターは、イプシロン・ロケットの第1段モーターと共通化し、さらに姿勢制御用ガスジェットやアビオニクスも共通化するなど、イプシロンとのシナジー効果も狙っています。(第1章「宇宙ロケットのあゆみ」P22-23より)
書籍紹介
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい宇宙ロケットの本 第3版
的川泰宣 著、A5判、160ページ、税込1,620円
宇宙へ飛び立った衛星の数は5000機以上。民間企業も乗り出し、新たな宇宙時代が始まっています。宇宙ロケット開発の歴史から、エンジンの仕組み、打ち上げや軌道投入の基本を解説。人気作の新版です。
著者紹介
的川 泰宣(まとがわ・やすのり)
JAXA名誉教授、はまぎん こども宇宙科学館館長
1942年(昭和17年)2月23日、広島県呉市生まれ。1965年(昭和40年)東京大学卒業。1970年(昭和45年)東京大学大学院博士課程最後の年に、日本初の人工衛星「おおすみ」の打上げに参加。以後、ハレー彗星探査、科学衛星計画、「はやぶさ」など、数々のロケット開発・衛星開発に携わる。東京大学宇宙航空研究所・宇宙科学研究所・宇宙航空研究開発機構(JAXA)を経て、現在に至る。工学博士。
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日刊工業新聞ブックストア
目次
抜粋(全65項目)
第1章 宇宙ロケットのあゆみ
米ソの宇宙開発競争のはじまり「先行したソ連」
月面への先陣争い「月に立った最初の人、アームストロング」
イプシロンとH3の新時代「新しい二つのロケット」
第2章 ロケットはなぜ飛ぶか
ロケットの推進原理「「反動」による力」
ロケットのスピードを上げる工夫「ガスの噴出速度を速く、質量比を小さく」
多段式ロケット「質量比と比推力の限界を越える工夫」
第3章 ロケットの推進剤
推進剤の役目「酸素は燃料の何倍も必要」
固体ロケットと液体ロケットの違い「高性能な液体、シンプルな固体」
庶民の味方ハイブリッド・ロケット「環境にやさしく安全で扱いやすい」
第4章 ロケット・エンジン
ノズルの役割「高速で噴射、大きな推進力を生む」
固体ロケット・モーターのしくみ「モーター・ケース、推進薬、ノズル、点火器からなる」
液体ロケット・エンジンのしくみ「燃焼室で推進剤が燃え、できた高温ガスが吹き出す」
第5章 ロケットの構造
軽く、薄く「打上げ時の重量の80%以上が推進剤」
ロケットのいろいろな構造「設計荷重に耐える構造」
ロケットの材料に求められること「構造材料と機能材料」
第6章 ロケットを正確に飛ばすには
ロケットの誘導制御って何?「「航法」「誘導」「姿勢制御」」
ロケットの航法「慣性航法が多く使われる」
回転するジャイロと回転しないジャイロ「姿勢と角速度を測る」
第7章 ロケットの打上げ
世界のロケット発射場「低緯度ほど燃料が得」
日本のロケット発射場「各地の射場と歴史」
ロケットをどっち向きに飛ばすか「目標とする衛星の軌道傾斜角で決まる」
第8章 惑星への旅
人工衛星と惑星探査機の違い「地球の重力圏を脱出して探査する」
ホーマン軌道と会合周期「最も燃料消費を小さくする」
惑星探査機の打上げと地球脱出「秒速11.2キロメートルを越える」
第9章 宇宙往還の時代
ISSへの物資輸送と「こうのとり」「ISSへの物資輸送を支える補給機」
民間ロケットと普通の人の宇宙旅行「海外旅行気分で宇宙へも」
「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ「太陽系往還時代が始まった」
第10章 これからの宇宙ロケット
イオンエンジンとソーラーセイル「「はやぶさ」と「イカロス」」
完全再使用のスペースプレーン「夢の宇宙輸送システム」
宇宙エレベーター「ロケットに代わる宇宙輸送の手段」
著者の的川泰宣氏の新作『3つのアポロ 月面着陸を実現させて人びと』が6月27日に発売。月面着陸から50年を記念した作品です。表に出ることの少なかった様々な立場の人びとにスポットライトをあて、その全貌を語ります。
Amazonでの購入はこちら(画像をクリック)
世界最高峰の固体燃料ロケット技術を継承することを目的として開発が始められたイプシロンは、M-Vはもちろん、H-ⅡAなどの既存のロケット技術を参考にしています。イプシロンの最大の特徴は、人工頭脳を最大限に活用し、組立・点検などの運用を効率化し、世界一コンパクトな打上げを目標に、打上げシステム全体を大胆に改革したことです。
創造性が要求される作業は人間でなければできません。決められた項目・スケジュールに沿った作業を行うのは、判断基準さえしっかり設定すれば人工頭脳の方が早いし確実です。
H-ⅡAロケットの後継としては、2020年にH3ロケットの試験機を打ち上げる予定です。開発の眼目は「使いやすさ」です。日本の宇宙活動は、天気予報からブラックホールまで、まさに私たちの生活のさまざまな側面に浸透しています。それらの日本の宇宙ミッションを、政府・民間を問わずH3によって大いに加速するとともに、デビュー以降の20年間を見据え、世界のさまざまな国からの要求に応えて、毎年六機程度を安定して打ち上げることをめざしています。
H3の開発は、柔軟性・高信頼性・低価格の3つの要素を目標としています。大型液体ロケットエンジン(LE-9)の開発など新しい技術に挑戦するとともに、固体ロケットブースターは、イプシロン・ロケットの第1段モーターと共通化し、さらに姿勢制御用ガスジェットやアビオニクスも共通化するなど、イプシロンとのシナジー効果も狙っています。(第1章「宇宙ロケットのあゆみ」P22-23より)
書籍紹介
今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい宇宙ロケットの本 第3版
的川泰宣 著、A5判、160ページ、税込1,620円
宇宙へ飛び立った衛星の数は5000機以上。民間企業も乗り出し、新たな宇宙時代が始まっています。宇宙ロケット開発の歴史から、エンジンの仕組み、打ち上げや軌道投入の基本を解説。人気作の新版です。
著者紹介
的川 泰宣(まとがわ・やすのり)
JAXA名誉教授、はまぎん こども宇宙科学館館長
1942年(昭和17年)2月23日、広島県呉市生まれ。1965年(昭和40年)東京大学卒業。1970年(昭和45年)東京大学大学院博士課程最後の年に、日本初の人工衛星「おおすみ」の打上げに参加。以後、ハレー彗星探査、科学衛星計画、「はやぶさ」など、数々のロケット開発・衛星開発に携わる。東京大学宇宙航空研究所・宇宙科学研究所・宇宙航空研究開発機構(JAXA)を経て、現在に至る。工学博士。
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抜粋(全65項目)
第1章 宇宙ロケットのあゆみ
米ソの宇宙開発競争のはじまり「先行したソ連」
月面への先陣争い「月に立った最初の人、アームストロング」
イプシロンとH3の新時代「新しい二つのロケット」
第2章 ロケットはなぜ飛ぶか
ロケットの推進原理「「反動」による力」
ロケットのスピードを上げる工夫「ガスの噴出速度を速く、質量比を小さく」
多段式ロケット「質量比と比推力の限界を越える工夫」
第3章 ロケットの推進剤
推進剤の役目「酸素は燃料の何倍も必要」
固体ロケットと液体ロケットの違い「高性能な液体、シンプルな固体」
庶民の味方ハイブリッド・ロケット「環境にやさしく安全で扱いやすい」
第4章 ロケット・エンジン
ノズルの役割「高速で噴射、大きな推進力を生む」
固体ロケット・モーターのしくみ「モーター・ケース、推進薬、ノズル、点火器からなる」
液体ロケット・エンジンのしくみ「燃焼室で推進剤が燃え、できた高温ガスが吹き出す」
第5章 ロケットの構造
軽く、薄く「打上げ時の重量の80%以上が推進剤」
ロケットのいろいろな構造「設計荷重に耐える構造」
ロケットの材料に求められること「構造材料と機能材料」
第6章 ロケットを正確に飛ばすには
ロケットの誘導制御って何?「「航法」「誘導」「姿勢制御」」
ロケットの航法「慣性航法が多く使われる」
回転するジャイロと回転しないジャイロ「姿勢と角速度を測る」
第7章 ロケットの打上げ
世界のロケット発射場「低緯度ほど燃料が得」
日本のロケット発射場「各地の射場と歴史」
ロケットをどっち向きに飛ばすか「目標とする衛星の軌道傾斜角で決まる」
第8章 惑星への旅
人工衛星と惑星探査機の違い「地球の重力圏を脱出して探査する」
ホーマン軌道と会合周期「最も燃料消費を小さくする」
惑星探査機の打上げと地球脱出「秒速11.2キロメートルを越える」
第9章 宇宙往還の時代
ISSへの物資輸送と「こうのとり」「ISSへの物資輸送を支える補給機」
民間ロケットと普通の人の宇宙旅行「海外旅行気分で宇宙へも」
「はやぶさ」から「はやぶさ2」へ「太陽系往還時代が始まった」
第10章 これからの宇宙ロケット
イオンエンジンとソーラーセイル「「はやぶさ」と「イカロス」」
完全再使用のスペースプレーン「夢の宇宙輸送システム」
宇宙エレベーター「ロケットに代わる宇宙輸送の手段」
著者の的川泰宣氏の新作『3つのアポロ 月面着陸を実現させて人びと』が6月27日に発売。月面着陸から50年を記念した作品です。表に出ることの少なかった様々な立場の人びとにスポットライトをあて、その全貌を語ります。
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