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女性の工学部卒はなぜ少ない?企業はロールモデルで魅力を伝えよう

立川敬二元NTTドコモ社長からの提言
 【就業、海外と格差なお】
 経済のグローバル化に対応して企業ではダイバーシティー(多様性)の確保が求められているが、その一つが女性活用の問題である。1999年に日本で男女共同参画基本法が制定され、以来15年、3次にわたる5カ年計画で女性の社会進出を国を挙げて推進してきた。

 各省庁もいろいろな取り組みをしている。例えば厚生労働省は99年からポジティブ・アクション(Positive Action)の名のもとに均等推進を図っている。その一環として毎年、均等推進企業を表彰している。また、経済産業省は12年から「なでしこ銘柄」の登録制度を開始。これまでに73社を登録している。機会均等問題は内閣府の課題であり、目下20年に向け女性管理者比率を30%にする、いわゆる「2020―30」運動を推進している。

 こうした動きにもかかわらず、現在、日本の女性の就業は、14年のOECDの調査によれば、25歳から54歳で72%に達しているものの、スウェーデンの83%に比べるとまだまだ低い。また、14年の15歳から64歳の就業者の男女比率をみると女性は43%である。

 理系の女性の活躍が遅れていることも問題である。理系女性を研究者と技術者に大別すると、研究者は比較的順調に伸びており、13年で14%を占めている(欧米に比べると3分の1に過ぎない)女性研究者は農学、医学、薬学の分野に多く、研究成果も上げている。98年に始まったロレアール・ユネスコ女性科学賞では、これまで5人の日本女性が受賞している。

 【工学部の魅力アップを】
 一方、女性技術者についてみると、全技術者に占める女性比率は、わずか数%にしか過ぎない。この理由は学部学生の分布を見れば明らかである。文部科学省の14年の統計によれば、女子学生は全体の44%で、理学専攻26%、工学専攻13%。大学進学に際し工学部を選択してもらうことが肝心である。

 内閣府の男女共同参画局では、「リコチャレ応援団」を認定している。理工系にチャレンジしようとする女性を支援しようというもので、数百の大学、企業が応援団になっている。大学で工学部を魅力的にすると同時に大切なことは、工学部を卒業したら世の中に魅力的な働き場所があることや、立派なロールモデルがあることを企業が示さなければならない。

 建築、化学、薬品関係の会社ではこれまでも女性が多数働いてきた。電子情報通信、エレクトロニクス、ロボットといった機械産業など女性が活躍できるであろう分野もある。土木工学でも最近は設計者として活躍する人たちが出ている。

日刊工業新聞2015年8月24日付けパーソン面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
立川氏の指摘の中でとりわけ共感できるのは「立派なロールモデルがあることを企業が示さなければらならい」との点。文系理系を問わず、女性の就業継続においては自身の将来像がイメージできる身近な先輩の存在は案外重要です。

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