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航空機業界の国際認証“Nadcap”って何?―新規参入への重要なステップ


行政も認証取得を支援


 すべて英文で書かれた事前のチェックリストによる内部監査が必要。1―5日間程度のジョブ監査には初回監査で3日間の場合、5225ドル(約52万2500円)程度かかる。
 それでも、日本での審査を担うPRI日本事務所(愛知県春日井市)によれば、Nadcap取得を希望する企業は増えている。民間機を中心に航空機産業は拡大傾向にある。その中で、海外メーカーから受注を取り付けるには取得は必須条件だからだ。
 行政による支援措置も充実してきた。愛知県はNadcapの申請を目指す県内企業に対し、一部費用を負担して専門家を派遣。静岡県産業振興財団も同様に、申請料や審査料などの一部経費を助成する制度を始めた。

海外との競争強化も


 一方、Nadcap認証を取得する動きは日本だけでなくアジア全体に広がっている。特に顕著なのは中国だ。エアバスは08年に、中国の航空会社向けを念頭に天津市に小型機「A320」の最終組立工場を稼働。中国系の航空会社などが同機を大量発注し、12年夏には100号機目を出荷した。中国でのNadcap審査数も現地サプライヤーの仕事量に比例するかのように増え、09年には日本を抜いてアジア最多になった。他のアジア各国も同様だ。橋爪由剛PRI日本事務所長は「現在、取得企業は欧米中心だが、10―20年後には状況が変わってくるだろう」と予想する。

 日本の中堅・中小はこれまで、重工メーカーを経由したボーイング向けの部品製造などで存在感を示してきた。ただNadcapの申請数から見ると、今後は中国や台湾などとの受注競争が激化する可能性もある。航空機市場は世界的な伸びが予測されるだけに、日本勢には海外企業から直接受注できる高い品質管理能力が問われそうだ。

(文中の役職や各種データ、行政の施策などは掲載当時のものです)
日刊工業新聞 2015年08月24日 機械・ロボット・航空機面、2013年06月03日 自動車・航空機面再編集
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
「Nadcap」についてまとめました。この認証は、航空機産業の参入障壁のひとつになっているとも言われます。日本企業が海外メーカーとの取引を始める際にはほぼ必須の要件ですし、国内大手企業に対してもアピールポイントの一つとなります。

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