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トヨタ東日本が“拠点化”急ぐ。九州は連携相手かライバルか

部品産業の裾野じわり。小型車の専門集団に向け正念場
トヨタ東日本が“拠点化”急ぐ。九州は連携相手かライバルか

設計と生産現場が連携してシエンタの競争力を高めた(TMEJ宮城大衡工場)

 トヨタ自動車が東北地域で自動車生産の“拠点化”を固めつつある。トヨタは東北を愛知、九州に次ぐ「国内第3の生産拠点」と位置づけ、2012年に旧関東自動車工業など東北3社を統合しトヨタ自動車東日本(TMEJ)を設立。3年を経てTMEJは小型車の専門集団として車両開発も担うまでになり、部品産業の裾野も広がってきた。
 
 初の全面改良
 「開発から生産まで担った全面改良の第1号」。白根武史TMEJ社長が、こう満足げに紹介するのは宮城大衡工場(宮城県大衡村)で生産するトヨタの新型小型ミニバン「シエンタ」だ。プラットホーム(車台)やパワートレーンはトヨタの開発だが車体骨格や内装、外装といったアッパーボディーはTMEJが企画、デザイン、設計を担当した。

 設計開発、生産技術、生産現場が図面段階から連携することで、車両設計も大きな変革が可能になる。例えば新型シエンタのフロアを支える部品のロッカー。床高さを旧型比55ミリメートル下げるために、ロッカー厚を薄くした。

 しかしロッカーが薄く、低くなったせいで、溶接ロボットのアームがロッカー上部に干渉して溶接位置まで届かなくなった。さらに耐チップ塗装と呼ばれるボディー下面の塗装では、ロッカーを飛び越しドアまで塗料がかかってしまう。

 このため溶接ロボットのアームはシエンタ用に新たに開発。塗装では、ロッカーの形状を変更して対応した。車両設計段階からの設計、生産技術、生産現場が一体となった改善が、利幅の薄い小型車では欠かせない。白根社長は「トヨタのグローバル小型車生産拠点の手本となりたい」と自信をのぞかせる。

 サプライヤー30拠点増加
 この3年間で東北での部品調達も進んだ。TMEJの東北での仕入れ先生産拠点は11年と比べ1次サプライヤーが9拠点、2次サプライヤーが21拠点増えて全体で30拠点増加。合計で127拠点になった。

 仕入れ先組織「TMEJ協力会」225社のうち地場企業で構成する東北部会は36社。現地調達率や東北部会数について数値目標は明確にはしないが「長い時間をかけてもっと増やしたい」(白根社長)と現地調達率のアップに意欲をみせる。

 今後も台数が見込めそうな重要な車種の生産が計画されるTMEJ。トヨタの東北での小型車生産の“進化”と“深化”は、これからが正念場となる。
(文=伊藤研二)

日刊工業新聞2015年08月24日 自動車面/2014年08月01日 列島ネット1面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
レクサスの生産など品質で先行する九州。一方で、九州がこれから目指す車両開発をすでに行う東日本。今後の2拠点間の協調と競争が楽しみです。

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