話題になったピーナッツもやし、金融機関が頭を抱えた黒字倒産の中身
決算は直近3期とも黒字、巧妙な粉飾決算か
今年1月、福岡地裁へ自己破産を申請した出萌(いずも)は、特許技術を活用したピーナツもやしの生産および販売を目的に2004年に設立した。ピーナツもやしは落花生の新芽。栄養価が高く健康ブームのなかでひそかに注目を集めた。
生産能力を増強するため06年以降は相次ぎ工場を建設。ベンチャーを対象とした経営者表彰を受けるなど対外的な評価も高めていった。
地元の契約農家から集荷した各種野菜をカット野菜や総菜などに加工するほか、独自の低温フライ製法で野菜チップスを製造するなど6次産業化への取り組みも強化。多角化を進め、18年3月期の年売上高は約32億円にのぼった。決算は直近3期とも黒字。金融機関も「正常先」に格付けていた中での破産だった。
破産申立書には、同年夏の台風襲来により発生した工場の雨漏り・浸水被害を受けたことで事業継続が困難になった、との記述が見られる。
ただ、それが事実であろうとなかろうと、20億円超の借入金を過少に見せる粉飾決算に手を染めていた点は見過ごせない。取引金融機関ごとに異なる明細表を作成するなど手の込んだ粉飾で、倒産するまで発覚することもなかった。
破産申立書にも明確な記載がないため、真相はやぶの中だが、借入金を「売上高」に振り替えることで売上高と利益を水増しし、赤字を隠してきた可能性がある。
売り上げ増に伴う増加運転資金として調達していた借入金の実態は、赤字補填資金だったということになる。倒産直前になっても金融機関に返済猶予の相談すらなかったのは、デューデリジェンスなどにより粉飾決算が発覚するのを恐れたためだろう。
事業性評価に基づく融資、取引先企業の抜本的な事業再生を求められる金融機関が最も嫌がるのが、粉飾決算だ。これまでも多くの企業が粉飾に手を染め、経営破たんしてきた。発覚すれば支援が打ち切られる。ただ、発覚しなくてもいずれ行き詰まることを出萌の倒産が証明している。
(文=帝国データバンク情報部)
<企業概要>
出萌(株)
住所:福岡県糸島市二丈深江973
代表:岩橋孝行氏
資本金:9800万円
年売上高:約32億1600万円(18年3月期)
負債:約58億5000万円>
生産能力を増強するため06年以降は相次ぎ工場を建設。ベンチャーを対象とした経営者表彰を受けるなど対外的な評価も高めていった。
地元の契約農家から集荷した各種野菜をカット野菜や総菜などに加工するほか、独自の低温フライ製法で野菜チップスを製造するなど6次産業化への取り組みも強化。多角化を進め、18年3月期の年売上高は約32億円にのぼった。決算は直近3期とも黒字。金融機関も「正常先」に格付けていた中での破産だった。
破産申立書には、同年夏の台風襲来により発生した工場の雨漏り・浸水被害を受けたことで事業継続が困難になった、との記述が見られる。
ただ、それが事実であろうとなかろうと、20億円超の借入金を過少に見せる粉飾決算に手を染めていた点は見過ごせない。取引金融機関ごとに異なる明細表を作成するなど手の込んだ粉飾で、倒産するまで発覚することもなかった。
破産申立書にも明確な記載がないため、真相はやぶの中だが、借入金を「売上高」に振り替えることで売上高と利益を水増しし、赤字を隠してきた可能性がある。
売り上げ増に伴う増加運転資金として調達していた借入金の実態は、赤字補填資金だったということになる。倒産直前になっても金融機関に返済猶予の相談すらなかったのは、デューデリジェンスなどにより粉飾決算が発覚するのを恐れたためだろう。
事業性評価に基づく融資、取引先企業の抜本的な事業再生を求められる金融機関が最も嫌がるのが、粉飾決算だ。これまでも多くの企業が粉飾に手を染め、経営破たんしてきた。発覚すれば支援が打ち切られる。ただ、発覚しなくてもいずれ行き詰まることを出萌の倒産が証明している。
(文=帝国データバンク情報部)
出萌(株)
住所:福岡県糸島市二丈深江973
代表:岩橋孝行氏
資本金:9800万円
年売上高:約32億1600万円(18年3月期)
負債:約58億5000万円>
日刊工業新聞2019年6月11日