ファナックが惚れ込んだPFNの西川社長が考える近未来

「来春に自律学習ロボットのプロトタイプを発表したい」(稲葉ファナック社長)

 ファナックが機械学習技術の応用で協業するプリファード・ネットワークス(PFN、東京都文京区)に対して、計9億円を出資することが決まった。資本提携により協業を加速させ、新技術をロボットなどの主力製品へ早期に適用させることが目的。2016年春までに一部の試作版の完成を目指す。ドイツの「インダストリー4・0(I4・0)」など製造業革新が進む中、新たな差別化要素としてファナックが機械学習にかける期待は大きい。

 「より密接なパートナーとなるための出資だ」。ファナックの稲葉善治社長はこう強調する。9月末までにPFNの第三者割当増資を引き受け、9億円を出資する予定。これによりPFNが発行する株式総数の6%相当を取得する。PFNの西川徹社長は「資金を活用して人材強化などを進め、研究を加速させたい」としている。

 ロボットや工作機械用コンピューター数値制御(CNC)装置などにPFNの機械学習技術を応用し、装置の知能化を推進できるという。特にロボットは、センサーによる画像認識や予防保全の高精度化、さらにティーチング(動作教示)の簡略化などの効果も見込まれ、多くの技術革新が期待できる。協業の成果となる新たな自律学習ロボットは「来春の自社展示会でプロトタイプを発表したい」(稲葉社長)としている。

 近年はI4・0など、あらゆる装置をネットワーク化しモノづくりを徹底的に効率化しようとする動きが顕著。装置メーカーごとにネットワーク化の仕組みが異なる従来の常識は崩れつつある。さまざまなメーカーの装置が障壁なくつながる世界が志向される中、競争の激化は避けられない。ファナックが機械学習技術の取り込みを急ぐ背景には、こうした競争原理の変革があるとみられる。
(文=藤崎竜介)

協調し合うロボットで生産効率を100倍に


 

6月に開催された日刊工業新聞社創刊100周年記念シンポジウム「見えてきた近未来のスマートコミュニティ×ロボット~人工知能やIoTでコミュニケーション、コミュニティが変わる!~」における西川社長の発言を抜粋


 大学院1年生の時に会社を設立し、検索技術やビッグデータ技術の研究開発を行っていたが、昨年新しい会社をスピンオフした。今までは、「人が生み出すデータ」を扱ってきたが、IoTの急速な普及で、「機械が生み出すデータ」をいかに処理するかが重要になる。そこにフォーカスし、デバイス、機械から生まれる大量のデータを人工知能のテクノロジーで活用しようと。

 今後、IoTやAIでイノベーションが起きるのは製造業。あとは交通システムと自動車、ライフサイエンスの分野ではないか。製造業に関しては、インダストリー 4.0というドイツを中心にデータの活用で効率化する流れがある。もっと大きなイノベーションを起こせるはず。インダストリー 4.0ではロボットをインテリジェントにすることには目が向いてなく、センシングされたデータ処理にフォーカスされている。

 人工知能をロボット制御そのものに使っていくべき

 我々は、AIをロボット制御そのもの、最適化そのものに使っていくべきと考えている。協調し合うロボットで、生産効率を10倍にも 100倍にもするような仕組みをつくっていけると思う。

 もう1つは自動車の分野。自動運転をはじめとして、人がドライビングしていた状況から、大量のセンサーデータを人工知能が同時に処理して、人よりも安全な運転、交通システムを実現することができると思う。人工知能は、特にこの2つの分野でかなり近いタイムスケールでイノベーションを起こしていくはずだ。

 今、実際にモノをつくるのは、基本的には人がつくるか、産業用ロボットがつくるかだ。産業用ロボットを制御するプログラムは、今は人が書いている。なので、複数のロボットが協調して何かモノをつくるときには、人がわかりやすい形でプログラムを書いてあげないと、到底制御し切れない。

 シーケンス制御にしても、人がある程度、工程をシリアライズしてプログラムを書かなければならないが、並列性を極限まで高めれば、オーバーラップしてロボットが動作できる。人ではルールは書けないが、機械であれば、その複雑なルールまで構築し得るのではないか。そうすると並列性が10倍にでも100倍にでも上げられる。

日刊工業新聞2015年08月24日 機械・ロボット・航空機面の記事に加筆

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明 豊

明 豊
08月24日
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今、機械学習のベンチャーとしてプリファード・ネットワークスは世界中から注目される存在。買収などで海外に技術や人材を流出させないためにも、ファナックの出資はとても意義がある。ファナックももともとはPFNのようなベンチャーだったと思うとこの組み合わせも興味深い。

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