ニュースイッチ

次世代スポーツぞくぞく創出!ハイテク・アナログ最前線

スポンサー、メディアでの拡散も鍵
次世代スポーツぞくぞく創出!ハイテク・アナログ最前線

新型鬼ごっこ「鏡オニ」(ニコニコ学会β運動会部)


アナログスポーツ


 そこで、ボールや大玉、綱などハイテクを使わないアナログスポーツも開発されている。同運動会部と運動会屋(運営団体NPO法人ジャパンスポーツコミュニケーションズ、米司隆明代表理事)が開いた運動会ハッカソンでは、大玉相撲や人間輪投げリレー、綱引き玉入れなどの4種目が開発された。

 どれも名前通りの競技で、大玉相撲は大玉を押して相撲をする。人間輪投げリレーはフラフープを仲間に投げて輪が入ればOK。人間輪投げを繰り返して100m先のゴールにたどり着いたチームが勝者だ。綱引き玉入れは綱を引きながら、両端の先にあるカゴに玉をいれる。

 非常にシンプルながら競技にジレンマがデザインされていてゲーム性を高めている。例えば人間輪投げリレーは一度に投げる距離と輪が入る確かさがトレードオフになる。距離を稼ぐほど、一回のミスが命取りになる。

 綱引き玉入れは綱を引かないと玉が入る距離まで近寄れない。しかし、引き手が玉入れを始めて力が抜けると引き戻されてしまう。3対3と5対5、20対20では、引き手と玉入れの配分戦略が大きく変わる。少数になるほど一人が引くか投げるかする影響が大きく、優勢と劣勢が激しく入れ替わる。一点でも勝ち越したら、全員で綱を引き続けて相手に投げさせないなど、チームカラーが色濃く出る。

 ハイテクスポーツを開発するmeleap(メリープ、東京都渋谷区)福田浩士CEOは運動会ハッカソンに参加し、「簡単なルールでも工夫次第でかなり面白くなる。ハイテクスポーツはアナログを超える面白さをつくらないといけない」と気を引き締める。競技のジレンマはハイテクスポーツにとっても重要な要素だ。ジレンマをうまく設計することでスコアの上限をなくしたり、通信速度や遅延など技術的に難しい部分を気づかなくさせられる。

次世代メディア対応 


 新スポーツを広める上で重要なのが次世代メディアへの対応だ。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で共有しやすい6-60秒の動画でスポーツを観戦できる「フラッシュスポーツ」が模索されている。

 短距離走や相撲のように勝敗が短時間で決まり、わかりやすい競技は広まりやすい。プレー時間が数時間にわたり、駆け引きや優勢と劣勢がゆっくりと入れ替わる競技は長時間視聴しないとドラマが伝わらない。慶応義塾大学の稲見昌彦教授は「ラジオ放送に合わせて野球がデザインされ、テレビ放映に合わせてアメフトがデザインされたように、SNSに合わせてスポーツをデザインしていく必要がある」という。

 まねのしやすさも重要な要素だ。ニコニコ学会βをサポートするドワンゴ会長室の伊豫田旭彦氏は「ソーシャルメディアで遊びの本質が『競争』から『模倣』へ移った」と説明する。ニコニコ動画の「やってみた」では、ネットゲームのプレースタイルが投稿されると次々に、まねをした投稿を呼び、分派し増殖していく。新スポーツも競技コミュニティーを広げるには、まねのしやすさや共感ポイントのデザインが大きく影響する。神奈川工科大学の中村隆之特任准教授は「新スポーツが面白いことは前提として、開発や普及には社会活動のあらゆるノウハウが必要だ」と説明する。

誰もが新しいスポーツを作れる


 市民発のスポーツは規模は小さいが多彩だ。サッカーのようにプロから日常にまでまたがる巨大な競技コミュニティーを目指すよりも、小さく多様な群衆型のコミュニティーとして成長している。すべての競技がプロ化を目指すわけではなく、シーンや仲間に合わせて面白い競技が選ばれる。「道」よりも家庭料理に近い。同運動会部を主催するエウレカコンピューター(埼玉県戸田市)の犬飼博士eスポーツプロデューサーは「誰でも新しいスポーツや遊びを創れる。自身がプレーヤーであり開発者でもあると気づいてほしい」という。多様なコミュニティーが多彩なスポーツを育もうとしている。
(文=小寺貴之)
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
フィジカルが強くなければスポーツは強くなれない。もちろんそのようなスポーツも多いでしょうが、そういった思い込みをなくせば、誰もがスポーツを楽しめるようになるのではないかと思いました。

編集部のおすすめ