JR各社の突風や短時間豪雨に備える技術、「安全と運行」どう両立?

 JR各社は、近年増加する突風や短時間豪雨などの異常気象に対応するため、列車運行の安全性、安定性を高める新技術の導入に取り組んでいる。線路沿線に設置した風速計や雨量計、気象庁からの気象情報を元に判断する従来の列車運転規制では、局地的な異常気象への対応に限界が生じている。規制区域を予防的に拡大、長時間化するのではなく、乗客の安全と利便性を両立させる最適な運行の実現を目指している。

前例なき研究


 JR東日本は2017年末から、山形県庄内地域でドップラーレーダーを用いて突風の進行を観測し、列車運転規制の実施に活用している。同地域では冬期に日本海の海上で発生した突風が多く襲来する。05年に羽越線の特急列車が脱線して乗客5人が死亡する痛ましい事故が発生した。

 事故を再び起こさないため、気象庁気象研究所とともに前例のない突風を探知する手法の研究に取り組んだ。降水粒子からの反射波を用いて上空の風を観測するドップラーレーダーで、渦(突風)を探知して動きを追跡。進路予測を算出する技術を実用化した。

 JR東の太田朝道常務は「安全確保とともに輸送影響をなるべく少なくする」と話す。突風が影響する恐れのある他地域にも、同技術を展開できないか模索しているところだ。

レーダー活用


 一方、JR西日本は気象庁のレーダー雨量を活用した時間雨量による運転規制の検討を始めた。レーダー雨量は、雨粒から返ってくる電波の強さを元に1キロメートル四方の降水量を推測したデータ。現在は約12キロメートルおきに設けている鉄道雨量計による実測値を区間の代表値として、運転規制の発動を判断している。

 JR西の来島達夫社長は「雨量計間の局地的な大雨を早期に把握でき、運転規制をよりタイムリーに行える」と話す。19年はレーダー雨量に関する情報を収集して課題を洗い出し、早期の導入を目指す。従来よりも狭い範囲を対象にした運転規制の導入には、データの信頼性や実効性の検証が必要との考えだ。

減災システム


 数十分後の予測値に基づいた運転規制の導入も検討課題だ。JR東らは気象庁が提供する250メートル四方の短時間降水予測「高解像度降水ナウキャスト」の活用も視野に入れる。また、JR各社の基礎研究を担う鉄道総合技術研究所(鉄道総研)では、気象予測情報から線路沿線の浸水や土砂崩壊といった危険を表示して列車運行停止などの検討材料とする「降雨予測値を用いた短時間強雨に対する減災システム」の開発にも取り組んでいる。
(文=小林広幸)

日刊工業新聞2019年4月24日

  

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